そうして始まる僕らのカタチ 1
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「あーあ……」

 思わず声に出してため息をつく。机にすっかり身を預けて、わたしはだらしない格好でたった一人、教室に居残っていた。

 熱が下がって登校したはいいけれど、今日は成瀬とマトモに会話せずに一日が終わってしまった。必要最低限の話はしたつもりだけど、わたしは極力、彼のほうを見ないようにしてた。午前中は心配してくれたのか、わざわざ話しかけてくれた成瀬も、時間が経つにつれて気を悪くしたんだと思う。午後は一言も喋らないで、部活に行ってしまった。

 自分で望んで避けたんだから仕方ないことなのに、わたしは何だか寂しくてしょうがなかった。

「勝手だよねぇ……」

 誰もいない教室に、わたしの声が静かに響く。

 ちゃんと早く話せばいいんだ。おとといのことは、聞かなかったことにしてって。ホントに「成瀬となら」って思ったことは確かだけど、それを現実にするにはわたしはまだまだ『お子さま』なんだから。

 成瀬があのとき本気を出したのは、きっと浅はかなわたしを懲らしめる意味合いがあってのことだろう。きっとそうだ。だから、ちゃんと話せば納得してくれる。いつもみたいに「しょうがないな」と苦笑いして、許してくれるはず。

 そしたら、すぐにこんなモヤモヤしたキモチはなくなってしまうのに。

「……明日」

 両手を握りしめて、低く呟く。

 いつまでもこうしていても、何も変わらない。明日、もう一度頑張ってみよう。狼狽えて、ヘンに緊張してるのはわたしなんだから、わたしさえしっかりすれば何とかなる。この雰囲気が続くのは、絶対にイヤだもんね。だったら頑張るしかない。

 よーし!

 気合い一発、両手でパチンと自分の頬を叩く。そして勢いよく立ち上がり、わたしは教室を飛び出した。



 【続】

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