カップケーキ戦争 5
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 ――えーと?

 わたしと曽根は顔を見合わせた。そして、曽根が訊ねる。

「ナニ固まってんの、お前ら」

「……タカー」

 マミーが口を開いた。出てきたのは何だか泣きそうな声。曽根はぎょっとしながら、マミーを見た。

「ンだよ……?」

「いつのまに瀬戸と、そんなカンケーにっ」

「はあっ?」

「匂いが分かるほど近づいたことがあるってことでしょー?」

「ないないないないないないっ!」

 立ち上がって、わたしは全否定。しかし今度は冴香が、これみよがしにため息をついてみせる。

「これだから天然バカップルはねえ……ところ構わず、二人の世界を作っちゃって」

「てか、俺は曽根がナチュラルにああいうコトできちゃうほうが衝撃的なんだけど……」

「あー確かにね」

「キャラじゃないよねー」

 顔を寄せ合い、ぼそぼそと話しだす三人。

「保護者だよな」

「ベタベタに甘いわよね」

「意外にツボを心得てるよなー」

 好き放題に喋り倒す彼らに、いよいよ曽根が眉間の皺を深くした。

「お前らなあ……!」

 片手を握り締めて唸る。すると、彼らは真顔でこちらを向いた。

「タカー」

「ンだよっ?」

 感情の読み取れないマミーの声に、不機嫌絶頂のまま曽根が応じる。

 そこに三人が揃って、言ってのけた。

『キモイっ』

 一瞬の静寂。

 何を言われたのか理解できなかったのか、曽根の目が瞬きを繰り返す。だけどすぐさま立ち直り、彼はマミー達に吠えかかった。

「てめえらっ!」

「きゃー、タカが怒ったー」

「ホントのことでしょっ」

「うわ待て曽根落ち着けっ!」

「落ち着いてられるかっ!」

 口々に言う三人を、曽根は怒りの形相で追いかけ始めた。さすが野球部。あっという間に外野のほうまで走り去っていく。

 他の部員さん達は目を点にして、彼らを見ていた。

 あーあ。

 すっかり置いてきぼりにされて、わたしはまたベンチに腰を下ろす。

「休憩時間なのに……」

 追いかけっこはとどまるところを知らない。彼らはグラウンドをフルに使って走り回ってる。

 ――後でバテても知らないんだから。

 いつも通りの見慣れた光景。

 それに半分呆れつつ、でも口元に笑みを浮かべて、わたしは見物を決め込んだ。


 そしてまた、楽しくも騒がしいわたし達の日々が始まった。

 明日もイイ日になりますように。



『カップケーキ戦争』終


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