何時もばかりは騒がしいこの空間も、コチコチと時計の秒針が聞こえるほど静寂している。
 今ここに居るのは机を向かい合わせにして座る俺と同級生であるこいつの二人だけ。因みに同じクラスでは無い。保育園児だった頃からの、最も付き合いの長い……なんだろう。腐れ縁てヤツ?
 欠伸を噛み殺し、教室の窓から、僅かに茜色がかかった空を仰ぎ見ていると、一直線に白線が伸びていく。
 飛行機雲を見た時って、昔から何となく虚しい感じがするんだよなぁ。特に俺の場合、授業が終わったらバイト先直行な帰宅部だから、放課後は決まって何時も一人だし。
 あの飛行機も何処か遠い国を目指しているんだろうか。そう考えると、留年と留学って案外、そんなに遠くないかも知れない。先の読めない境遇にいる同士、一人きりだと妙に心細いトコロとかさぁ。
「ちょっとだけ、似てると思わない?」

 元々皆無に等しい集中力がすっかり途切れ、暇潰しに何気なく向かい側に座る奴に話を振ったら、顔面に見事なチョップを叩き込まれた。
 手加減なしで食らわされたそれは本気で痛かった。顔を押さえながら身悶えていると、容赦なく降り注がれる、全然違う、下らない御託並べてないで集中しろ、時間がないと罵倒の嵐。
 そりゃあ、追試テストの勉強を放課後まで付き合わせた俺が悪いけどさぁ。
 年離れたヘタな教師より、毎回学年上位入り確実の同世代に教えて貰う方が致命的にアホな俺としても効率いいんだよこれが。
 苛立ちを隠せないと思うよ、うん。今日、部活あったのに無理矢理付き合わせたしね。だけど何も不意打ちで顔面に食らわすことは無いだろうがこの野郎! 鼻血が出たらどうしてくれるんだ馬鹿。
 自分がちょーっと、バスケが上手くて、女子に騒がれてるからって。
 こっちは十人並みの超平凡顔だぞ! 只でさえ大して高く無い鼻がこれ以上低くなったらどう責任とってくれるってんだ。
 普段はスカしてるくせに、俺に対してだけ何故か一々小言が多いし、偶に煩わしく感じる時がある。
 それでも、やっぱり留年は何としてでも免れたい。ダブると、こいつと同級生じゃなくなるから。
 なんかそれってつまらなそうだ。退屈しそうだし。何よりもタメのこいつに敬語使って先輩呼びなんて意地でも嫌だ。このままの位置で、対等でありたい。出来るならずっと……

「よーしっ! 俺、今から本気出しちゃうから!」

 ガッツポーズで意気込むも、最初からそうしろと言いた気な幼なじみの呆れ顔があった。

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