訓練のないお休みの日、私とアルミンは図書室にやって来た。
私とアルミンと言っても今日は読んでしまいたい本があるから図書室に行く、と言ったアルミンに無理矢理私がついて来ただけだけど。
最初のうちはそれぞれ本を読みながら思い思いに過ごしていたけれど、段々飽きてきてしまった私は読書に没頭しているアルミンに構って攻撃を始めた。
頬杖をつきながら隣りに座っているアルミンの腕をつんつんつついてみる。

「アルミーン」
「うん」
「アルミンさーん」
「うん」
「アルミンちゃん」
「うん?」
「アルミンくん」
「うん」
「アルミンのおたんこなすー」
「え?」

本から目は離さなかったけど律儀に私の呼びかけに答えてくれていたアルミンが、目線を上げて不思議そうに私を見る。
読書の邪魔をしちゃ悪いと思いつつも、興味を引けたことに嬉しくなってしまう。

「今日はせっかくのお休みです」
「う、うん」
「でもアルミンが構ってくれない」
「それは…ごめん。でもナマエだって月に一度サシャとお菓子を買い漁ってきてそれを食堂で広げて食べてる時は僕に見向きもしないじゃないか…」
「!……」
「そんな変な顔してごまかしても駄目だよ」

変な顔とは失礼な。
唇を尖らせて目を見開いておどけてみたらそりゃ変な顔か。
というか月に一度の頑張っている自分へのご褒美と称したお菓子パーティーの時はアルミンそっちのけでサシャと盛り上がっているから、気にしてたのかとちょっとにまにましてしまう。

「ね、お互いさまだろ?」
「……」
「そっぽ向いて聞こえないフリしたって駄目だってば」

自分に都合の悪いことは聞こえないふりをしてみたけれど非難されてしまった。手厳しい。
それなら、と泣き落とし作戦に移ることにする。

「アルミンは私のことなんてどうでもいいんだ……うっうっ…」
「な、なんでそうなるのさ…」
「私と本とどっちが大切なの!?」

大げさに泣くふりをして顔を覆い、めんどくさい女を演じてみる。
手の隙間からちらりと反応を伺うと眉を下げて困った表情のアルミンが見えた。

「そんな…どっちなんて比べるものが違いすぎるよ…」
「じゃあ私のどういう所が好き?」

態度をコロッと変えてわくわくしながら問いかけたらちょっと引いたような、呆れたような顔をしている。
アルミンもよくもまあなんでこんな気分屋で面倒な奴に付き合ってくれるんだろうと自分で不思議に思ってしまう。自分だったらご遠慮願いたい。だからこそ聞いてみたくなった。

「……言うの?」
「どーんとどうぞ」

アルミンは目を泳がせてから、ちらりと私を見た。
早い所この場を切り抜けて黙ってもらおう、本読みたいし。と目が語っているような気がするけれど気のせいということにしておく。

「…無邪気で素直なところかな」
「うんうん。あとは?」
「えっと…いつも一生懸命な頑張り屋で努力を怠らないところとか」
「ふんふん」
「ふざけているようで実はやる時はやるし根は真面目なところとか」
「ほうほう」
「それから…可愛いところとか」
「……」
「あと僕を好きになってくれたところかな」
「………」
「…何か言ってよ…」

自分で言っておいて恥ずかしくなったらしくほっぺたを赤く染めながら拗ねたように私を見てきたけれどこれは、あれだ、私の方もだいぶ恥ずかしい。
私自身でさえあまり意識していなかった部分を見透かしていたところはさすがアルミン、と脱帽する。

「……なんかものすごく照れる…」
「ナマエが言えって言ったんじゃないか…」

確かに聞きたがったのは私だけど、面と向かってこうも真っ直ぐ口説かれると照れる。恥ずかしい。

「アルミンのばかー天然すけこましー」
「えぇ!?」

照れ隠しに可愛くないことを言ってから、机に突っ伏して赤くなってるんだろう顔を隠そうとしたらゴン、と良い音を立てて額が机にぶつかった。痛い。

「だ、大丈夫…?」
「うん……」

そんな照れ隠しもアルミンにはきっとばればれなんだろう。
それなら、と顔をがばりと勢い良く上げて綺麗な青い瞳を見つめた。

「おでこ赤くなってるよ…」

表情は呆れたように困った顔をしてたけど、ぶつけた所に手を伸ばして控えめにさすってくれるアルミンはとても優しい。
知ってた?そういう所が大好きだってこと。
ずい、と身を乗り出す。

「私がアルミンの好きな所も教えてあげようか」
「え?」
「興味ある?」
「う、うん……結構」

耳に顔を近付けて内緒話をするみたいに一言告げたら、さっきよりも顔を真っ赤にしたアルミンの手から読んでいた本がばさ、と乾いた音を立てて滑り落ちた。



全部好きだから伝えきれない
それはずるいよ
(それなら僕だって)







「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -