※現パロ
※ちょいグロ
※アルミンだけ前世思い出してる



これは夢だ。

そこは今まで見た事もない世界。
得体の知れない巨人が支配する世界。
まるで玩具で遊ぶかのように人は四肢を引き千切られて、あるいは頭からかじられて、そのままあっけなく口に放り込まれる。
その先は灼熱の海。
じわじわと死に至る。
慈悲も何もあったものじゃない。
人類はただの餌。
そんな残酷すぎる世界。

夢だと分かっているのにこのリアルな光景は何だろう。
早くこんな悪夢から覚めたい。



次の場面は人が二人いた。
夕暮れで紅く染まる風景。
周りに巨人はいなかったけれど、一人は真っ赤になって倒れていた。
自分の流した血で濡れていて、もうこれは助からないだろう、と直感した。
傍らのもう一人はその真っ赤な身体を抱き抱えて、泣きじゃくって、必死にその人の名前を呼んでいた。
残酷で救いようがなくて、だけどそのあかい光景は美しくもあった。





目を開けるとそこはいつもの日常。
木の影でいつの間にか眠ってしまっていたらしい。
時計を確認するとまだ昼休みの時間で、寝過ぎたわけではないと安堵した。

ふと頬に違和感を感じてそこに触れると濡れていた。
赤い血ではない、透明な涙。
リアルなゆめ。


かさ、と近くで草の擦れる音がして目を向けると、心配そうな顔をしたクラスメイトが控え目に私を見つめていた。
あんまり話した事はない、名前は何だったかな、とぼんやりとした頭で考える。

「いつからいたの?」
「少し前だよ。君がすごく辛そうにして眠ってたから、気になって」
「起こしてくれれば良かったのに」
「…起こしちゃいけない気がしたんだ」
「そう」

彼自身もひどく辛そうで泣きそうな顔をしているのには気付いているのだろうか。

「あのね、あんまり話した事もないクラスメイトにこんな話するのもどうかと思うんだけど、」
「うん」

少し戸惑いがちな私に彼は続けて?と先を促す。

「夢を見てたの。こことは全然違う世界で、まるで本とかゲームみたいな所で、人は壁の中で暮らしてるの。壁の外には人より遥かに大きい巨人がいて、その巨人は人を食べるの。周りの人たちはどんどん巨人に食べられて、死んでいく」
「うん」
「変な事を言ってもいいかな?」
「どうぞ」
「貴方もいたような気がする。私たちは一緒に戦う仲間で、でもそれだけじゃなくていつも一緒にいて、心の支えで……」

信頼する仲間はたくさんいた。
でも彼だけは特別だった。

「大好きだった」

いつも隣りにいた。
目が合うとお互いちょっと照れたみたいに笑って、ぎゅっと手を繋いだ。
大切で絶対に失いたくないと思っていた。

「でも、私は…食べられちゃって……」

夢はそこで終わり。
その後の記憶はない。

気が付いたらぼろぼろと涙を流していた。
さっきとは比べ物にならないくらい、止め方を忘れてしまったかのように後から後から溢れ出る。


そうだ。
私はあの世界で生きていた。
もうどのくらい前の事かなんて想像もつかない。
だけど確かにあそこで、私は生きていて、そして死んだのだ。
夢なんかじゃなかった。

辛い記憶を思い出して悲しいのか、平和なこの世界に生まれて嬉しいのか、それさえあやふやでわからない。


彼が泣きじゃくる私の前にしゃがみ込んで、壊れ物を扱うみたいにそっと頬に触れる。
涙が親指を濡らすのも構わずに。
その優しさは変わらない。

「また会えたね」
「ッ…アル、ミン……!」

彼は泣きそうな顔で微笑んだ。
その儚くてアンバランスな表情が、相変わらずとても綺麗だと思った。


美しき世界
(君を守れなくてごめん)




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