※学パロ



季節はだんだん寒さが増して来た10月の終わり。
もうすぐ本格的な冬が来る前のイベント事と言えばハロウィンなわけで、町に並ぶお店の一角にはハロウィングッズのコーナーがあったりカボチャや魔女の飾り付けがされていたりとそこそこに盛り上がっている。
そんな雰囲気に私も便乗したいなと思って。
学校帰り、隣りを歩くアルミンに少しわくわくしながら話し掛けた。

「今日ってハロウィンなんだね」
「うん。ハロウィンって言っても特別何かするわけでもないけど、飾り付けは見てて楽しいね」
「そうだねー。あ、あのカボチャ、リヴァイ先生に似てる」
「…怒られるよ」
「今一瞬似てると思ったでしょ」
「ちょっとだけ」

リヴァイ先生似の目付きの悪いジャック・オ・ランタンを眺めながら、ふと良いことをひらめいて早速実践しようと思い付く。
ハロウィンと言えばあれだ。
子供たちが仮装して家を回りお菓子を貰う時のお決まりのセリフ…。

「トリックオアトリート!」
「え?とり…?あぁ、ハロウィンの決まり文句だね」
「そうそう。お菓子くれなきゃイタズラするぞー!」
「お菓子?あ、そうだ」

何やら鞄の中をごそごそやっていたアルミンは、目当ての物を取り出すと私にそれを差し出した。

「はい」
「……チョコレート?」
「うん。勉強してる時って時々甘い物が食べたくなるから、鞄の中に入れてるんだ」
「……そう」

ちゃっかりお菓子を受け取りつつも期待していたのと違う展開にじとりと半目でアルミンを見つめる。

「な、なに?」
「アルミンのばかー」
「えっチョコ嫌いだったっけ?」
「違うよ大好きだよ!そうじゃなくて、アルミンがお菓子持ち歩いてるなんて思わなかったんだもん」
「えぇ?ナマエがお菓子が欲しいって言うからあげたのに」
「お菓子じゃなくてイタズラしたかったの」
「そんなむちゃくちゃだよ…」

眉を下げて困った顔をしているアルミンを見て更にイタズラ出来なかったことが悔やまれる。
アルミンのことはいじめたくなるというか、戸惑わせたくなるというか、とにもかくにも困らせたくなってしまう。
おろおろしている時の顔なんかはとってもかわいい。
まるでつい好きな子にちょっかいをかけてしまう子供みたいだとは自分でも思うけどこれも一つの愛情表現なんだ、きっと。
たった今貰ったチョコの包みを開けて口の中に放り込むとじんわりと甘さが広がった。

「チョコ食べると幸せな気持ちになるよね」
「そうかな?まぁなんとなくわかるけど」
「お菓子もらっちゃったけどイタズラしてもいい?」
「な、何言ってるんだよ…。駄目だよ」
「えー」
「何するつもりだったの…?」
「聞きたい?」

ニヤリと笑って指をわきわき動かすと、アルミンの顔がひく、と引きつった。
構わず素早くアルミンの脇腹に両手を伸ばして容赦なくこちょこちょとくすぐる。

「やっやめっ…!ちょっナマエ、あは、あははは!やめ、やめてってば…!」
「やめなーい」
「ほんとにっ…やめっ…あははは!く、くすぐったいっ…」
「どーだまいったか」
「まいった、まいったから…!」

ぴたりと手を止めて離すとぜぇはぁと肩で息をしているアルミンが抗議の目を向けて来た。
涙目になってるから全然怖くないしむしろ更に加虐心が沸いてくる。

「お菓子あげたのにこの仕打ちはひどいよ」
「そうだね。私ばっかり得してるもんね」
「まったくもう…」

アルミンは呆れたようにはぁ、と溜め息を吐いた。
彼を困らせることが生きがいのようになっている私にはそんな様子でさえもにやにやと表情を崩してしまいそうになる程楽しくなってしまう。
満足して上機嫌になりながら歩き始めると、ふと何かをひらめいたらしいアルミンが後ろで小さくあ、と呟いた。

「ナマエは今お菓子持ってる?」
「え?ううん、持ってないよ」

にこりと笑ったアルミンに、長い付き合いからの経験上なんだか嫌な予感がして顔が引きつる。
そして告げられる一言。

「トリックオアトリート、だよ」
「え」
「お菓子くれなきゃイタズラしちゃうよ?」

ちょっと首を傾げて微笑みながらそう言ったアルミンは端から見れば天使のようにふわふわしていて癒しそのものみたいだけれど、今の私にはそれが悪魔の微笑みにも見えてしまう。
自分がイタズラすることばかり考えていたからまさか同じように返されるとは思いもしなかったわけで。

「…お菓子持ってない…!」

さっきアルミンから貰ったチョコレートはとっくに胃の中に収めてしまった。

「それじゃあ覚悟は出来てる?」
「えっ」

冷や汗がたらりとこめかみを流れるような感覚。
さっきのお返しにくすぐられる、と咄嗟に脇をしめファイティングポーズをして身構える。
アルミンが近づいてきて、来ると思っていた脇腹ではなくておでこに一瞬何かが触れたと思ったらそれはすぐに離れていった。

「なっ……え!?」
「ごちそうさま」

アルミンが私の額にキスをしたのだと理解してからは、顔から火が出そうになるくらい恥ずかしくて真っ赤になってしまって、あのいつも困った顔ばかりのアルミンがこんなことをするなんてとパニックになってしまった。
こんな予想外のイタズラは卑怯だ…!

「あ…アルミンのばかー!」

真っ赤になっている私を見ながら、実はちょっと恥ずかしかったらしいアルミンも頬を染めて楽しそうにくすくす笑った。



羊と狼のハロウィン
やられてばっかりだと思ったら大間違いだよ





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