※学パロ



隣りの家に住む幼馴染みのナマエは、よくふらりと僕の家にやってくる。
それは小さい頃から高校生になった今も変わらずに続いていて、宿題をしに来たり、ゲームをしに来たり、何をするでもなくぼーっとテレビを見たりとナマエにとっては第二の家みたいになっているような気がする。
ナマエの家とはお隣りさんという事もあって家族ぐるみの付き合いなので、お互い今更遠慮とかはないしナマエが僕の家にいることが最早当たり前の光景になっている。
今日もナマエは学校が終わった後、僕の家にやって来た。
疲れたーなんて言いながらさっき渡したオレンジジュースを飲み、リビングのテーブルに突っ伏してぐったりしている。

「このあっつい季節に体育で長距離走とかどうかしてる…」
「ナマエのクラスは午後体育だったんだっけ」
「そうなの。あ、そうだ聞いてよ、今日うちのクラス大変だったんだよー。授業中にサシャが早弁してるのばれちゃってさぁ」
「あぁ、あれってサシャが犯人だったんだ。こっちの教室までキース先生の怒鳴り声が聞こえてきたよ」
「そうそう。それで説教が伸びて昼休みが10分しかなくなっちゃって」

大急ぎでお弁当食べて大変だったんだからーと嘆くナマエはその時の様子を思い出したのか、はぁと深く息を吐いた。
確かにその後すぐに体育で長距離走はなかなか辛いものがあると思う。

「お疲れさま。あ、そう言えばさっきおじいちゃんがケーキ買って来てくれたんだ。食べる?」
「食べるー!」

ややグロッキーな今のナマエにケーキはどうなんだろう、と思ったけれどどうやら杞憂だったらしい。
さっきまでぐったりしていたのに、ケーキと聞いた途端に手を上げて元気良くはーいと返事をしたナマエに思わず苦笑しながらキッチンに向かう。
冷蔵庫からケーキの入った箱を取り出し、お皿とフォークを2つ持ってテーブルに置いた。
箱の中には瑞々しいいちごが乗ったショートケーキと、山のてっぺんに甘露煮の栗が乗ったモンブラン。
わざわざケーキを二つ用意しておいてくれるなんて、おじいちゃんは今日もナマエが来ることを予想していたのかな、とちょっと可笑しくなる。

「ショートケーキとモンブランどっちがいい?」
「選んでいいの?」
「いいよ」
「うーん…じゃあモンブラン!」

ナマエのお皿にモンブラン、僕のお皿にはショートケーキを乗せる。
にこにこしながらいただきますをしてナマエはケーキを一口食べた。
幸せそうにへにゃりと顔を崩したその様子を眺めつつ、真っ赤に熟したいちごにフォークを刺してから、ふとそう言えばナマエは昔からいちごが大好物だったなぁと思い出す。

「いちご食べる?」
「……!ううん、いらない」

一瞬ぱあ、と表情を明るくしたナマエは、はっと何かに気付いたような顔をしてから首を横に振った。
不思議に思って問い掛ける。

「なんで我慢してるの?あげるよ」
「…アルミンもいちご好きでしょ」
「好きだけどナマエほど好物ってわけでもないから。意地張ってると食べちゃうよ?」
「…じゃあ、いる」

いちごが刺さったフォークを差し出すと、ナマエは渋々と言った様子でぱくり、と赤い果実を口に含んだ。
本当は食べたかったくせに何で突然意地を張ったんだろう?
現にいちごを口に含んだナマエは我慢していたことなんか忘れたみたいで幸せそうな顔をしてもぐもぐしている。

「ありがと」
「どういたしまして」

ナマエは好きなものを食べる時、見ているこっちまで嬉しくなってしまうような、心の底から美味しそうな顔をする。
そのちょっと間の抜けた幸せそうな顔を見るのが好きだから、つい甘やかしてあれやこれやと好物を与えてしまう。
まるで餌付けしてるみたいだな、と思ってちょっと可笑しくなる。

「昔は平気で僕の分のいちごも横取りして食べちゃってたっていうのに突然どうしたのさ?」
「う、わ、私だって遠慮するってことを覚えたんですー!もう大人なんだから!」

ぷくりとほっぺたを膨らませて拗ねたみたいな表情をしたナマエは、大人と呼ぶにはまだまだ早すぎるぐらい子供っぽくて思わず吹き出しそうになってしまう。

「もー!今笑ったでしょ」
「ごめんごめん。でも少なくとも僕の前では遠慮なんかしなくていいよ」
「なんで?」
「ナマエが好きなものを美味しそうに食べてる時の顔が好きだから、かな」

そう言うとナマエは少し顔を赤くしてアルミンの馬鹿、なんてぼそぼそ言っていた。

「…大食いだって思ってるでしょ」
「思ってないよ。むしろナマエはもっと食べて体力つけないと」
「アルミンだって。…あ」

はっとして何かを思い付いたらしいナマエは、フォークで自分のモンブランのてっぺんに乗っている栗をぷすりと刺して僕の方に向けてきた。
さっき僕がしたのと同じ行動。
よく考えたら行儀が悪かったかな、と思ったけれどここは僕の家で相手はナマエだから今更だ。

「くれるの?」
「うん。いちご貰ったから」
「じゃあ貰おうかな」

どうぞ、と言ってもう一度目の前に伸びてきた栗をぱくり、口に含むと溶けるような甘さが口の中に広がった。
これでおあいこね、とナマエはいちごを食べた時と負けないぐらい嬉しそうな顔で微笑んだ。



幸せのはんぶんこ
君が喜ぶならなんでもあげる





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