今日は久しぶりの休日で、紅茶を淹れながら読みかけの本でも読もうかなと広間を通りがかると、テーブルの近くで何やら一人でしゃがみこんでいるハンジの後ろ姿が目に入った。
具合でも悪いのだろうかと近寄って声を掛ける。

「ハンジ?どうかしたの?」
「ん?あ、ナマエ!いい所に!」

どうやら具合が悪いわけではないらしい。
いつものように明るい顔をして振り返ったハンジは、私の姿を確認すると勢い良く立ち上がった。

「ねぇ見てよこれ」
「?」

ハンジが目を輝かせながら、うきうきと落ち着かない様子で自身の足元を指差す。
そこにはこの調査兵団本部には似つかわしくない、小さな子供がいた。

「……どこからさらって来たの?」
「人聞きの悪い!よーく見てみてよ。この子見覚えがない?」

見覚えも何も私にはこんな小さな子の知り合いはいないはず。
年は4つか5つ程だろうか。
髪は金色で顎ぐらいの長さで綺麗に切り揃えられていて、大きめな瞳は鮮やかな青い色。
多分男の子だろうと思うけど、一瞬女の子に間違えてしまいそうになるほど可愛い顔をしている。

………ん?
なんだか外見の特徴が誰かと被っているような…。

「……ちょっと有り得ない事を言ってみてもいい?」
「どうぞ?」
「……この子アルミンに似てない?」
「うん、本人だよ」
「は?」
「だからアルミン本人」
「はあぁ!?」

思わず大きな声をあげたらアルミン(仮)がびくっと体を強張らせてぷるぷる震えて涙目になっていた。

「あ、ご、ごめんね大きい声出して。ちょっとハンジどういうこと?」
「いやーさっき本部の地下で資料探しをしててさ。部屋の奥の方に小瓶に入った怪しげな薬を見つけたからちょうど通りがかったアルミンに飲ませてみたらこんな事になっちゃって」

何でそんな怪しげな薬が置いてあるんだとかそんな怪しげな薬をアルミンに飲ますな自分で飲めとか色々突っ込みたい部分はあったけど、これがもし万が一、本当にアルミンだとしたら大丈夫なんだろうか…?

「もうむちゃくちゃね…。その薬って一体何なの?」
「おそらく昔の研究者達も巨人に対抗すべく人類を巨人化出来ないかって研究をしてたんだと思うんだよね。まぁ出来なかったわけだけど。だからエレンの存在は本っ当に貴重で人類にとっての重要な第一歩なんだよ!あぁ巨人化したエレンの実験、次はいつ出来るかなぁ…」
「ハンジ話がずれてる」
「あぁごめんごめん。で、巨人化実験の傍らで巨人を小さくする研究も行われていたんじゃないかと思うんだ。そんな薬が発明されれば巨人の口にぶちこむだけで人類の脅威である巨人を小さくしてしまう事が出来る。これは画期的だよ。本当に巨人に効き目があったならの話だけど。まぁ実際に効果はなかったからあんな地下の奥深くに放置されてたんだろうね」
「……それにしても人に効き目があるのはすごい事なんじゃないの…?」
「先代の研究者たちはそうは思わなかったみたいだね。まぁ確かに人を小さくしても利点なんかあまりないし。ちなみに中身も年相応になってるよ」

それで納得するのは如何なものかと思うけど、実際今まで人を小さくする薬なんて聞いた事もなかったしそういうものなのかと認める他ない。

ハンジの足元に隠れている彼と視線を合わせるためにしゃがみ込み、出来るだけ優しい声で話し掛けてみた。

「こんにちは。私はナマエって言うの。君のお名前は?」
「えっと…あるみん・ありゅれ…ある、れ、ると、です」
「……」
「ナマエ?どうかした?」
「か、」
「か?」
「かわいいーーー!!」

舌ったらずだけど一生懸命自分の噛みそうな名前を(実際噛んだ)教えようとしてくれて、小さくなっても礼儀正しいアルミンに思わず愛しさが込み上げてぎゅうっと抱きしめた。
ほっぺたもふわふわでやわらかい!

「あはは!ナマエはアルミンの事になると豹変するよね」
「これは反則だよ…。普段のアルミンも可愛いけどこんなちっちゃいアルミン可愛すぎてもうどうにかなりそう。持って帰ってもいい?」
「ナマエが憲兵団に持ってかれそうだね」

破天荒なハンジにはいつも面倒を起こして…と呆れる事が多いけど、今回ばかりはでかしたとしか言いようがない。
ハンジよ…よくやった!

「ちなみに薬の効果は一日ぐらいだと予想してる」
「えっ一日で切れちゃうの?」
「うわー残念そうな顔。薬が身体から抜ければ多分戻るはずだよ」
「まぁ15歳のアルミンが見られなくなるのは嫌だけど…」

とりあえず立ち話もなんなので、近くの椅子を引き寄せて座りアルミンに手招きすると、素直にちょこちょこと寄って来たので抱っこして膝の上に乗せた。
あぁ…可愛い……。

「少なくとも今日一日アルミンがこのままの状態だとして、放っておくわけにもいかないからお守り役が必要なんだけど…」
「もちろん私が立候補します」
「言うと思ったよ。ではアルミン護衛班は任せたぞ!ナマエ班長!」
「は!」

ぴしっと手を胸に持って行き敬礼すると、不思議そうな顔をして見ていたアルミンも真似をして小さな手を自分の胸に持っていったものだから、ハンジと顔を見合わせて大笑いした。





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