太陽の光を浴びて、まるで水面みたいにきらきらしている金色をじっと見つめる。
眩しく光り輝くそれは貴族の持っているような高価な宝石のようだ。
だけど実際に見たことのないそれよりもずっとずっと価値のある宝物みたい。

「アルミンの髪ってさらさらだよね」
「そうかな?」
「うん。私の髪くせっ毛だから羨ましい」

自分の癖のついた毛先を指でいじりながら、アルミンの真っ直ぐで綺麗な髪をじっと見つめる。
きらきらさらさらつやつや。
男の子でこんな髪をした人は同期の中でもあんまりいないと思う。いいなぁ。

「何か特別な事してたりするの?」
「まさか。みんなと一緒だよ」

なら根本的に髪質が違うのかなーなんて考えながら、そのさらさらに触ってみたい欲求がふつふつと沸いてくる。

「…あのさ。ちょっとだけ触ってもいい?あ、別にやましい気持ちとかはないから!ただの好奇心だから!」
「やましいって。構わないけど…」

ちょっと困ったように眉を下げて笑ったアルミンはやっぱりかっこいいしかわいい。
何と言うか、アルミンが笑うとその場の雰囲気がふわふわと穏やかになるというか。
好きになった欲目かな?
でもこういうふとした瞬間にあぁ好きだなぁ、なんて思ってしまう。
本当にいいの?と聞き返すといいよ、と返ってきて期待に胸が膨らんだ。

恐る恐るアルミンの髪に手を伸ばす。
おっかなびっくり慎重に撫でるように触れたその金色は、思っていたよりとてもさらさらつやつやしていて素直に感動する。
それと同時に女子として少し負けた気がした。
常々思っていたけれどアルミンはどうしてこうも女子よりも女子らしいのか。
見た目の話であって中身はとても男前なことは知っているけれど。

「うわー本当にさらさら!いいなぁ」
「そんな大したものじゃないと思うけど…」
「お前ら道の真ん中で何やってんだ」
「あ、ジャン見て見て!アルミンの髪すっごくさらさらなの!触らせてもらっちゃったー」

通りすがりのジャンを捕まえた。
興奮気味に話しながらえへへ、と心底幸せそうに笑う私はジャンから見ればだいぶ気持ち悪いんだろうなと思うけどこの際気にしない事にする。

「だらしない顔だな…」
「何か言った?」
「いや別に」

案の定呆れたような表情で見下ろしてきたので条件反射でじろりと睨み上げた。
視線の先の茶色い髪はどうなんだと興味が沸いてジャンには許可を取らずに手を伸ばして触れてみると、アルミンの時とは手触りが随分違って固くてごわごわしていた。

「ジャンのは全然さらさらしてない」
「うるせーさわんな」

手をはたかれお返しと言わんばかりにジャンの大きな手が私の頭を容赦なくぐしゃぐしゃにする。

「ちょっ、やめてよ!ぼさぼさになっちゃったじゃない!」
「元からそんなもんだろ」
「ひどっ!デリカシーのかけらもないよねジャンは!」

恋する者なら女子との接し方をもっと勉強しろ!アルミンを見習え!と声を大にして言いたい。
ミカサには絶対こんな事しないんだろうけど。
最近ジャンと話す機会が増えたのに比例して喧嘩をすることも増えた気がする。
喧嘩と言ってもふざけ合いのようなものだけど。
アルミンが困った様子でその光景を見つめていた。

「ジャンとミリアは仲が良いよね」
「「良くない!」」

綺麗にハモってしまった声と迫力にアルミンはびっくりしたようで一歩たじろぐ。

「息ぴったりじゃないか…」
「ジャンが真似したんだよ」
「誰がお前の真似なんかするか!」

アルミンはぎゃーぎゃー騒ぐ私たちをまぁまぁと宥めながら困ったような顔で笑っていたけど、いつもとはちょっと違うその表情に少し違和感を覚えた。
傷付いた時とか、悲しい時にするような、無理して笑ってるみたいな顔。
だけど私は馬鹿だから、その違和感を知ろうともせず特に気に留めていなかった。
アルミンの気持ちを全然わかってなかったんだ。



心に触れたい
(どうしてかな、目を背けたくなってしまうよ)





人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -