日が沈み、星がくっきりと見えるぐらい暗くなった所で今日の訓練はおしまい。
いつもと変わらない日常の中で今日唯一違った事と言えば、朝私がアルミンに想いを伝えた事ぐらいだけど、伝えた所で特に何が変わるでもなく一日は終わりを迎えようとしていた。

告白はしたけど、すぐにどうこうなるとは思ってない。
もちろんフランツとハンナみたいにお付き合いできたらそれはそれで嬉しいけど高望みはしない。
相手はあのアルミンなのだ。
焦らず気長に勝負と行こうじゃないか。
自分に自信があるわけでもないし振り向いてもらえるかなんてわからないけど、自分なりに頑張ってみようと思う。

よし!と気合いを入れた所で前から歩いてくるアルミンの姿が目に入った。
周りに人がいない状態で面と向かうのは朝ぶりだから、ちょっと恥ずかしいというか気まずい。
距離はどんどん縮まって、あっという間に向き合ってしまった。

「お、お疲れ」
「ミリアもお疲れ様」
「一人なの?」
「うん。僕は片付けの当番だったから。エレンとミカサは先に寮に戻ったよ」
「そっか」
「うん」
「……」

ほんの少しの沈黙の後、意を決してゆっくりと口を開く。

「…朝の事だけど」
「…うん」
「すぐに返事がほしいわけじゃないから、あの、ちょっとずつでももっと仲良くなれたらいいなってぐらいで…!その、いきなりだったし」

自分でも結局何が言いたいのかわからないぐらいにあたふたと捲し立てる。
そんな私を見てアルミンはくすくすおかしそうに笑うから、ちょっと拍子抜けした。

「なんで笑うの……」
「ごめん、朝とは随分勢いが違うなって思って」
「わ、私だって一応女の子なんだからちょっとは恥ずかしいんですー!」
「一応女の子って。ミリアは正真正銘女の子じゃないか」

女の子。
当たり前の事だけど、深い意味はまったくないんだろうけど、女の子として見てくれてるって事にドキドキした。
これはかなり重症だ。
私は目の前の男の子にだいぶ翻弄されているらしい。
当の本人はまったくその気はないんだろうけど。

「…アルミンってずるいよね」
「え?」
「この無自覚たらし!」
「無自覚……え!?」
「もっと好きになってもいい?」
「えぇ!?」

今度はアルミンが落ち着きをなくしてわたわたしながら真っ赤になった。面白い。

「そんなの答えようがないじゃないか。ミリアだってずるいよ…」
「私はいいよって言ってもらえたら嬉しいけど?」

にししと笑ってちょっとふざけて言えばアルミンは拗ねたような顔で見てきたけど、顔が赤いから全然迫力がない。
でもきっと私の方も人の事言えないね。

「僕こういう経験があんまりないから、どうしたらいいのかよくわからないんだ…」
「私もないなぁ」
「そうなの?」
「うん。告白したのもアルミンが初めてだし」
「そうなんだ…」

何かを考えていたアルミンは、次にはっとしてから頬をほんのり赤くさせて私の方を見た。
ほっぺたの赤いアルミンはとんでもなく可愛い。
顔がにやけそうになるのを我慢していると、申し訳なさそうな声色で悪夢のような一言が降り懸かる。

「えーと、その、ごめん」

え……?
ふ…ふられた……?
そんな可愛い顔しながら死刑宣告みたいな事するなんてとんだやり手だねアルミン…。
がっくりとうなだれていると焦ったような声が上から振ってきた。

「あ、ち、違うよ!そういう意味じゃなくって、何て言うか、ミリアが初めて告白するのが僕で申し訳ないって言うか…」

あ、なんだそういうことか。

「でもごめん、は違うよね。えーと、ありがとう…かな?」

照れたように笑ったアルミンはとても眩しくて、可愛くて格好良くて、私この人を好きになって良かったなって心の底から思った。
落としてから持ち上げるなんて高度なテクニック使われるとは思わなかったけど。

「アルミン」
「うん?」
「ばか!」
「え、」
「大好きだばかやろー!」
「ええ!?」

捨て台詞を吐いて女子寮に向かって走り出す。
途中で振り返ったらアルミンは立ち尽くしてこっちを見たままだったから、べ、と舌を出したら笑ってた。


観念してください
(こちらこそこんな素敵な気持ちをくれてありがとう)





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