※アルミンあまり出ません
※ジャンがメイン



「ジャンってミカサの事が好きなの?」
「はぁ!?」

午前の座学が終わり、午後の立体機動の訓練の時間。
前の班がワイヤーを駆使して木の上を飛んだり駆けたりしている間、後の班の私達はそれを眺めながら待機していた。
見ているだけなのも暇なので、同じく暇そうにして隣りに座っていたジャンに話しかけてみた次第だ。
ちなみに自分に正直であまり嘘をつかないジャンとは気が合うなと思う部分もあれば理解できずに苛つく部分もあったりで良くも悪くも話しやすい。
似たもの同士なのかもしれない。

「いきなり何言い出すんだお前」

ジャンの言動や行動を見ていると、彼は時折ミカサを目で追っては頬を赤らめたかと思えば、隣りのエレンに敵意をむき出しにして睨みつけたりと忙しい。そして分かりやすい。本人に特に隠す気がないのかもしれないけれど。
ミカサは基本エレンにしか興味を示さないし、かと言って当のエレン本人はまったくその事には気付いていない。
恋って難しい。

「不毛な恋をする事の大変さを参考にしようと思って」
「うるせぇよ。つうか参考って…お前も誰か好きな奴でもいんのか?」

自分からこの手の話題を出しておいて内緒にするというのも気が引けたので、言葉では答えず、地上に降り立って何やら話している幼馴染み三人組に視線をやる。
ジャンも怪訝な顔をしてからまた視線の先を辿っていた。
その人物を捉えると、びっくりしたように私の顔を見てから意地悪そうな表情で言う。

「は?お前趣味悪すぎだろ。よりにもよってあの死に急ぎ野郎とか…」
「は?違うし!何勘違いしてんの!?」
「なんだよ。じゃあ…アルミンか?」

頬杖をつきながら小さく頷くと、ふーんとか何とか言って鼻で笑った。失礼な奴だ。

「お前ああいうのが好きなのか?なんつーか意外だな。いつもエレンの奴とベタベタつるんで気持ち悪い印象しかねぇが」
「うるさいなー。好きになっちゃったんだから仕方ないでしょ」
「まぁそれに否定はしねぇけどよ。で、作戦は?」
「作戦も何もさっき告白した」
「は?マジかよ!?で?どうなった?」
「ドン引きされた」
「なんでだよ。どうせお前が変な事言ったんだろ」
「おいしそうって言った」
「馬鹿だな。お前は本物の馬鹿だ」

だってアルミンのほっぺたって白くてすべすべぷにぷにしてるし、かじってみたいって思ってるのは私だけじゃないはず。
……いや、そんな性癖持ち合わせてるのは私だけかもしれない。

「はぁーあ…お互いつらいね」
「お前と一緒にすんな。俺はまだ伝えてもないからな」
「残念だけど勝率は限り無くゼロに近いよ」
「うるせぇほっとけ!」
「私たち、お互いが好きだったら丸く収まるのにね」

自分がむちゃくちゃな事を言っているのはわかっている。
ジャンが好きなミカサはエレンしか見てなくて。
私が好きなアルミンは振り向いてもらえるかなんてわからなくて。ああ見えてなかなか手強そうだと踏んでる。
ジャンは一瞬面食らったような顔をしてから、はぁーーと呆れたように深い溜め息をついて心底嫌そうな顔をした。

「めちゃくちゃだろそれ…。それにお前となんて気持ちわりい」
「奇遇だね。私もジャンなんてこっちから願い下げだよ」
「喧嘩売ってんのか?」

口調は乱暴だし、自分に正直すぎるし、悪人面だし、馬面だし、アルミンとは正反対なジャンなんて好きになるわけがない!

握り拳に力を込めて、ジャンの脇腹辺りを殴ったらお返しに頭をはたかれた。
そのまま無言の睨み合いからの、どちらからともなく髪を引っ張り頬をつねられ足を蹴り、と荒々しい戦いに発展する。

何やってるんだよ二人とも…とマルコの呆れた声や、おっいいぞやれ!と煽るコニーの声が聞こえたけれど今はそれどころではない。
売られた喧嘩は…いや、どっちかと言うと私から売ったような気もするけど、とにかく負けるわけにはいかない。

「いって!噛むなバカ!」
「そんなに頭叩いたら身長縮むでしょバカ!」

大騒ぎをしていたらいつの間にか前の班の演習が終わったらしい。
休憩するためにこちらに向かって来ていた幼馴染み三人組があっけにとられたように私たちを見ていた。

「何だお前ら。次の対人格闘術の予習か?」
「二人とも、そんな所で暴れていたら邪魔になる」
「ジャンとミリアは仲が良いんだね…」

不思議な顔をして見てくるエレンと、迷惑そうなミカサ、苦笑しているアルミン。
言葉に詰まった私達の横を通り過ぎた三人を見送った後、ジャンの足を踏んづけておいた。やり返されたけど。


うまくいかない





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