「私、アルミンの事が好きかもしれない」

太陽が昇り始めた早朝、いつものように身なりを整えて部屋を出る。
今日も一日頑張るぞ、と気合を入れるためにぐっと伸びをした所で、前を歩く見慣れた背中が見えた。
金色の髪が歩くリズムに合わせて揺れている。
小走りで追い付いて軽く肩を叩き、朝の挨拶を交わす。
その後に唐突なこの台詞ではびっくりするのも無理はないかもしれない。

「おは、………え?」

運良く周りに人がいなくて良かった。
別に聞かれてもいいけど、聞かれると騒がれて囃立てられて色々と面倒な事になると思うし。
いつも一緒の二人も今日は珍しくいないらしい。

「えっと…それはどういう…」
「もちろん、恋愛の方の意味で!」
「れ、れん……!?」

ぼん、と爆発音がしたんじゃないかってぐらい顔を真っ赤にして視線を逸らし、下を向いてしまった。男の子にこんな事言うのもあれだけど、かわいい。

「…ミリア、からかうのはやめてよ…」
「からかってなんかないよ。最近考えてて、昨晩やっと気持ちがまとまった所なの」

太陽の下でキラキラ光る金色の髪とか。
男の子にしては大きくてとても綺麗な色の青い瞳とか。
いつも一緒にいるエレンとミカサと並ぶと少し小さいその背丈とか。
よく喧嘩をするエレンとジャンを宥めようとして困ったようにおろおろしている仕草とか。
かと思えば座学の時に人一倍真面目に教官の話を聞いている、いつもよりきりっとした横顔とか。
体力はあんまりないみたいだけどそれでもめげずに必死になって皆に追い付こうとしてる根性のある所とか。

ここ数日ぐるぐる考えて、やっぱり好きなのかなぁ、という結論に達した。
そして善は急げ、自分の気持ちを自覚して朝一番で伝えようと思って今に至る。

「ミリアって、その…すごく、積極的だね…」
「そうかな?このご時世いつ死ぬかなんてわからないから、今を全力で生きたいだけだよ」

訓練で死ぬ事だってあるし、また巨人が壁を壊すかもしれない。
明日生きてるかどうかもわからない。
言いたい事があったら言うし、伝えたい気持ちがあったらすぐに伝えたい。
後悔する生き方なんて絶対にしたくない。

「あ、でも迷惑だったら言ってね…?私人の気持ちを考えないで突っ走っちゃう所があるみたいでさ」

気をつけるようにはしてるんだけどねーなんて軽く笑いながら言う私をアルミンはちらりと上目遣いで見た後、すぐに斜め下の床を見つめてしまった。

「迷惑ってわけじゃ、ないけどさ……」

頬を染めてもごもごしているアルミンを見てホッと胸を撫で下ろす。
迷惑じゃないなら良かった。
そんな気持ちを持たれても迷惑だからもう近付かないで、なんて言われたらさすがに傷付く。
アルミンに限ってそんな事は言わないだろうけど。

「あの、一つ聞いてもいいかな…?」
「なあに?」
「ミリアはなんで僕の事なんか、その……す、好きになったの…?」
「うーん理由は色々あるけど、強いて言うなら根性がある所と優しい所かな?」
「優しいって……それなら僕じゃなくて他にも、」
「でもアルミンが好きになっちゃったんだからしょうがないでしょ?」

ぐ、と言葉に詰まったアルミンに一歩近付いて顔を覗き込む。
恋はするものじゃなくて落ちるものなんだって、そんなくさい事を誰かが言っていた。
でも本当にそう思う。
好きになってしまったのだから仕方ない。

「あと、おいしそう」
「お、おいしそう……?」

赤かった顔がさっと青くなり、片方の口の端をひくひく吊り上げたその表情にはドン引き、と書かれていた。
あれ、これは余計だったかな?
だけどめげてなんかやるもんか。


走り抜け、少年少女
(おいしそう、はともかく、そんな事言われたら意識してしまうじゃないか!)





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