技巧術では主に立体機動装置の仕組みや構造を理解し、バラバラに分解して整備や掃除を行う。これを怠ると実際に装着して使用する立体機動の訓練で支障をきたしたり事故に繋がることもある。そうして困るのは自分自身なので皆真面目に取り組んでいるようだった。
僕は体を動かす訓練よりは、知識を学ぶ座学や技術を磨く技巧術とか、こういったことの方が好きだ。
自分の装置をしまっている棚からそれを取り出していると、横でモニカが「技巧術は苦手なんだよね…」とどこかげっそりしながら呟いた。

「この装置だってどういう仕組みで動いてるのか実際よく分かってないし」
「ちゃんと理解しておかないと大きな事故に繋がるかもしれないよ」
「はーい。今日はアルミン先生に教えてもらいながらやろっと」
「モニカは真面目にやれば出来るのにやる気があるのかないのかよく分からないよね…」
「やる気ならあるよ?アルミンに教えてもらうのが好きなだけー」
「なにそれ…」

モニカの考えてることはよく分からない。
昔からの知り合いで幼馴染みという括りに分類されるんだろうとは思うけどそこまで仲が良かったわけでもないし、むしろ散々からかわれて来たことを考えると仲が良いなんてことはないと思う。それなのにさっきのライナーや昔から僕たちの関係を見て来ているエレンにまで仲が良いなんて言われるのは何故なんだろう。納得出来ない。
腐れ縁ってやつが一番近い気がする。
昼前の座学や昼休みの資料室ではモニカのせいで無駄に体力や気力を消費してしまったから、モニカはああ言ってるけどこの時間はあまり関わらないようにしよう、と思っていたのにその目論見は近くで同じように装置を取り出していたユミルとクリスタによって儚く消えた。

「お前らってさ、デキてんの?」
「え…」

僕たちの会話を聞いていたらしいユミルがニヤニヤ笑いながら問い掛けてきた。清々しいくらいに面白がっているんだろうなって言うのが一目瞭然でなんだか気が抜ける。
ユミルの隣りではちょっとユミル、と焦ったようなクリスタが彼女をやんわりと咎めている。でも少しだけ目がきらきらしてるのは気のせいなのかな。

「デキてないよ。ねぇ?」
「う、うん。そんなわけないよ」

心底不思議そうな顔でモニカが僕に同意を求めて来たので頷いた。
するとユミルは眉間にしわを寄せて不満そうな顔になり、クリスタは心なしかがっかりと肩を落とした。

「つまんねー反応だな」
「そんなこと言われても…」
「もっとこう照れるとか焦るとかねーのかよ。なぁクリスタ」
「え、えっと…もしアルミンとモニカがそういう関係だったら素敵だなと思ったんだけど、違うんだね。勝手なこと言ってごめんね」

無意識にモニカと顔を見合わせると、目を丸くして驚いていたような表情から一転して笑いを堪えるような、なんだかこう…ちょっとイラっとするような顔になった。

「素敵だって!どうするアルミン」
「別にどうもしないよ…」
「デキてるわけじゃないけど、私はアルミンが大好きだよ?」
「それは僕がって言うより僕をからかって遊ぶのがって意味だよね」
「そんなことないのになぁ」
「ふふ。二人は本当に仲が良いんだね」

ほら、まただ。
エレンやライナーに続いてクリスタにまで仲が良いだなんて言われて、みんな一体僕たちの何を見てそんなことを言うんだろう。
別に嫌ってわけではないけれど、不思議で仕方ない。

先に機動装置を取り出し終わったモニカがクリスタに昔のアルミンはね、なんて人の昔話を聞かせながら部屋から出て行く。
勝手なこと言ってないといいんだけど、と思いながら僕も装置の本体を手に取ったところでユミルがお前ってさ、と僕を見下ろしながら話し掛けてきた。
ユミルとはまだあまり話したことがないけれど、彼女の威圧的な雰囲気や粗暴な言動はどちらかと言うと得意な方ではなかったから少したじろぐ。
そんな僕にもお構いなしにユミルは言葉を続ける。

「他の奴らにはどこか遠慮してるとこがあるけどモニカにはそういうのないんだな」
「え…」
「むしろ自然っつーか言いたいこと言ってるっつーか。結構容赦ねーよな」

それは僕がモニカに散々からかわれているからで、そんな相手に遠慮をするのは気が引けると言うか癪と言うか、とにかく悔しいし。
そりゃ最初の頃は昔のことを思い出して少し怯えてたかもしれないけど、そんな反応をしてると余計モニカが調子に乗るんだと気付いてからはあまり必要以上に怯えなくなったと自分でも思う。
なんて言うか、そこまで親しいわけではない彼女にそんな風に指摘されて少し驚いたけど確かにそうなのかもしれない。

「まぁ別にどうでもいいけど。おい待てよクリスタ!」

考え込んでしまっていた僕を放置して、ユミルはがちゃがちゃと音を立てながら装置を取り出しモニカと先に行っていたクリスタの後を追って行った。



慣れってやつ



「どうしたのユミル。遅かったね」
「まぁな。なぁクリスタ、これはもしかしたらもしかするかもしれねーぞ」
「えっ?」
「なになに?何の話?」
「お前には関係ない。いや、あるけどない」
「えぇ?何それ気になる…」
「それはいいけどお前の相棒エレンたちの方行ったぞ」
「相棒?あ、アルミン?えっうそひどい!アルミーン!!」





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