※ユミクリ要素あり



あの日から彼の事が気になって気になって、自然と目で追うようになった。
もちろん周りには気付かれない程度にはさり気なく。

彼は、アルミンはエレンとミカサと仲がいい。幼馴染みらしいと言うのは前から知っていたけれど、一日の大半はよく三人で一緒にいるようだった。
そんな三人の中に一応同期の仲間とはいえ部外者の私がずかずかと入り込む図々しさはさすがになくて、目だけで追い続ける日々。

どうしてこんなに気になってしまうのだろう。
歌を聞かれたから?
綺麗な声だって言われたから?
結構ちょろい女な私。
意識し始めると色々気になって観察してわかった事は、彼は運動はとても苦手で体力もあまりないようだけど、座学は他の人より秀でているみたいで頭がとても良いらしかった。
知識も豊富でよく難しい話をエレンやミカサに話しているのもちらりと聞いた。
聞かされている二人はあまり聞いてなかったみたいだけど。


夕食時。
いつものように自分の分のスープとパンを受け取り、いつも一緒に夕食を食べているユミルとクリスタの姿をきょろきょろと探す。

「誰か探してんのか?」
「え?」

振り向くと、いつの間にか後ろにいたユミルがニヤニヤと楽しそうに私を見ながら笑っていた。

「お前さ、最近見すぎ。よく熱い視線を送ってるだろ。誰にとは言わないけど」
「……何の話?」
「バレてないとでも思ってんのか?まぁここはバカばっかりだから気付かない奴の方が多いか」
「だから、ユミル、何の話を、」
「言ってもいいなら言うけど」

ユミルはその粗暴な口調や行動のわりに意外とよく人の事を見ているようで、考えている事をぴたりと当てられたりしてびっくりする事がよくあった。
もしかしたら今回も、ユミルにはバレバレなのかもしれない、と焦る。

「言ったら駄目!」

周りには夕食を受け取るために並んでいる人たちでごった返している。
涙目になってキッとユミルを睨むと、はいはいと片手を降って歯を見せて笑った。

「そ、それに!今はユミルとクリスタを探してただけで、」
「ほー?今は、ねぇ…」
「ユミルったら!」
「わかったわかった怒るなよ。で、何で突然あいつなわけ?」

何でと言われても。
それはむしろ私が聞きたい。

「……私もよくわからない」
「はぁ?何だそれ。お、クリスタ!こっちだこっち」

私たちを探していたのだろうきょろきょろしているクリスタの姿を見つけると、ユミルは小柄な彼女に向かって手招きをした。

クリスタがこちらに来るまでの短い時間、ユミルは私の耳元で小さく呟くように言う。

「見てるだけじゃ何も変わんねーぞ。私みたいにガンガンいかねーと」

それは、ごもっともだ。
ユミルの場合はガンガン行きすぎな気もするけど。

ようやくこちらに辿り着いたクリスタの肩に手をかけて、ユミルは遅かったじゃねーかとかなんとか言っていた。
その光景を眺めながら、だからと言ってガンガン行くといっても具体的にどうすればいいのだろうとぼんやり考える。

「ナマエ、どうしたの?ぼーっとしてるみたいだけど。具合でも悪い?」

クリスタが心配そうに私を見る。

「ナマエはある意味病気なんだ。な?」

ニヤニヤとしながらユミルが言うものだから、私はムッとしたの半分恥ずかしいの半分で余計な事を言うな、と視線で訴えかけつつ頬を膨らませる。

「病気…!?それなら早く医務室に行かないと、」
「あ、違うのクリスタ、それはその、ただの例えだから気にしないで」

慌てて言うとクリスタはそう?とまだ心配そうに私を見るから、大丈夫大丈夫、と無理矢理笑顔を作った。

「お、そうだ」

何かを思い付いたらしいユミルは立ち止まっていた足を動かしてずんずんと奥のテーブルに向かって歩いて行く。
不思議に思った私とクリスタは一瞬顔を見合わせた後、それに続いた。

ん?
ユミルの向かった先は、え、いや、ちょっと待って、そこは、

「よぉ。隣りいいか」

何を思ったかそれまで名前の出されなかった彼本人に話し掛けた。
心底びっくりする私の顔をちらりと見て、ユミルは今日何度目かのニヤニヤ笑いをする。


ユミルはもしかして私の恋を応援してくれるのかもしれないと淡い期待を抱いたけれど、これは、あれだ。ただ面白がってるだけだ。絶対。


悪魔の微笑み



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