ナナの瞳が薄く光っていることも、さっきから蝋燭の炎が時折揺れていることも、涙が凍り始めていることも、、カリムは全て気づいていた。
「………カリムさんはもし、自分の信頼する仲間が人工的に焔人をつくっていたとしたら……どうしますか」
不自然な事件が起こっているのは第一の管轄だ。ナナのように選択肢のないカリムからしても、それはあり得ない話ではなかった。
「止めるしかねェだろ、俺たちが」
その言葉に、ナナは余計に泣いた。
ナナの気持ちはカリムにも痛いほど分かった。同じだからだ。仲間に対する信頼、そうでないと思いたい気持ち、それと同時に無いとは言い切れないその可能性に対する複雑な感情もーー全て同じだった。
ただ唯一違うのは、ナナは勘でも可能性でもなく、信頼する二人のうちのどちらかであることをすでに知っているということだ。
だからこそ余計に辛かった。
ーーと、その時だった。この部屋を唯一照らしていた蝋燭の火がシュボッ…と音を立てて消えた。
「……!」
消したのは、さっきから蝋燭の炎を揺らしていたナナの第二世代能力だった。
けれどまた無意識的に発動していたナナは、その事に気付いていない。
「俺が消した」
蝋燭が消え、何も見えなくなってしまった数秒後。ナナは肩に触れた大きな手に引き寄せられ、頭が何かに当たった。それがカリムの頬だと気づくのには少し時間がかかった。
「……嘘だ」
「さあな」
肩を抱き寄せていた大きな手はナナの頭に、肩にはしっかりと鍛えられた腕が回る。
二ヶ月前にもこんなことがあった。あれは突然氷が出てパニックに陥った時だったか。
包むように頭に置いてあった大きな手が、今度は頬に移動する。ナナの頬で凍っていた涙はもう溶けていた。周囲にあった炎が小さかったこともあるが、ナナも能力を抑えることができていた。
「ったく……お前は何回自分を凍らしたら気が済むんだ」
氷のように冷たくなった頬を、カリムの手の甲の指が温める。
「……カリムさんは怖くないの?もし仲間がって考えたら」
「怖いというより信じたくねェが……けどもしそうなった時は、俺たちは覚悟を決めるしかねんだ」
カリムはナナの肩を抱き寄せ、その手でナナの頬を温めたまま。ナナはカリムの方にもたれたまま。
ーー二人は動かなかった。
「そう……ですよね」
「ああ」
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