ーーあれから数年が経った今。
アイツは主にレッカの影響を受けて少しずつ笑うようになった。口数も出会った頃に比べて圧倒的に増えたし、たまに自分から話しかけにもくる。
普通に普通の女らしくなった。
「カリム、ナナを見なかったですか?」
だが、一つだけ変わらないものがあった。
鎮魂時のあの冷酷な表情だ。
「どーせレッカがその辺連れまわしてんだろ」
アイツは一度だけ、家族は全員燃えていないと自分の過去を話したことがあった。あんな表情になるのはそれが理由なのかもしれない。
「ナナは本当にレッカに懐きましたね。そういえば昨日、あの二人を目にした女学生が悲鳴を上げていたな……」
「悲鳴?………いや、懐いてんのはどっちかっていうとレッカがナナにだろ。ナナが断ることを知らねーだけだ」
「レッカは近隣の女学生に大人気ですから。二人にそういう気持ちがなくても、周りからすれば恋人同士なんかに見えたんじゃないですかね。私たちからすれば兄と妹にしか見えないですけど……」
だからこそレッカは常にアイツを構うのだろうと、俺は思っていた。そしてそれはフォイェンも俺も例外ではなかった。
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