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- ナノ -

翌日、朝。

第一のだだっ広い施設の中にある庭を通り、食堂へと向かう。俺たちに与えられた部屋もその建物も何もかもが広くて綺麗で第八とはまるで真逆だ。

大聖堂や食堂、それから出動時。俺たちは必ずこの格差を表すような庭と、そこで会話に花を咲かせるシスターや隊員を目にしなきゃならねェ…………。

「あの人は……」

ちょうど俺の視線の先に、昨日岸里と対戦してぶっ倒れて運ばれたナナ・沚水さんがいた。この人の第三世代能力はハンデもあって一回しか見れなかったけど、ハンパなかったな…。

頭ン中の想像をそのまま炎で表現してるって、そういやタマキが言ってたか。アレにあの炎を氷に変える第二世代能力が加わったら、もっとヤバそうだな。昨日は自爆してたけど。

あの人もこれから食堂に向かうのか。
ーー接触してみるか、"あの事"もあるし。




新人研修前。

表面上は第五と第八の夜間合同演習としていたが、本当は第五の大隊長プリンセス・火華をシンラは打ち負かしていた。

それがきっかけで第五がーーというよりプリンセス・火華個人が第八に力を貸すようになり、第八は人工的に焔人を作っている者がいるという情報を得た。そしてその焔人の出現が新宿ーーつまり、第一の管轄で起きていることから、第一の内部調査をするため、シンラとアーサーの第一への新人研修が決まった。

その際、火華はシンラ達にこう言っていた。

「第一にいるナナ・沚水という女には一応、注意したほうがいいだろうな」

「ナナ・沚水か………。確か訓練校を首席で卒業し、スカウトで第一に入り、新人大会でも他部隊と圧倒的な差をつけて優勝したらしい」

「そこの筋肉ゴリラの言う通り、能力も頭も兼ね揃えたソイツが以前、一度だけ私の元を訪ねたことがあってな」

「えっ…そうなんですか?」

「ああ。ソイツは私に「焔人は人工的に作ることは可能か」と聞いてきたよ。何故そんなことを聞くのかと聞いてみれば、ソイツは今まで現場で見てきた焔人を分析した手書きのノートを私に見せた」

「なっ……!中には何が書いてあったんですか!?」

「ヤツは研究者じゃない。分析と言っても所詮は表面的に見たことだ。一通り見てやったが、そのノートに気になることは無かった。
ーーだが、ソイツの真実を求める気持ちは汲んでやろうと思ってな。その時の私は「不可能ではない」と答えた」

「そんな優しさ持ち合わせてたのか…」

「持ち合わせてはいなかったが、ヤツが自分が来たことを誰にも話さないでくれと、結構な金を用意していたのでな」

「なんかそれ、手慣れてないか?」

「私が何を言っても表情を変えない実に淡々としたヤツだったが、わざわざ私のところまで口止め料を持って出向いたことも、そもそも私に聞きにきた事も、普通の人間の思いつく事ではないだろう。ーーこれは同じ女としての勘だが、アイツも何か腹の底で企んでいると思う」

「じゃあ………」

「ーーどうだかな。もしソイツが人工的に焔人を作っているのだとしたら、第一の管轄で起きているのは少し引っかかる。口止め料を持ってくるような女だ。もしアイツが犯人なら、もっと別の場所でやると思うのが私の見解だ。

ーーまぁ、警戒して損はないだろう」

頭のキレる人
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