「いつからも何のためも……カリムさんには勿論、第一の誰にも関係ないと思います。それにカリムさんがこの話をバーンズ大隊長に話されれば私はクビですし」
ーー淡々としていた。
ナナは諦めていた。これ以上欺くことを。先輩の中でも最も鋭くキレる人に気づかれたんならもうしょうがない。三人の中から焔人を作っている人間を探し当てておびき出し、ジョーカーに出された条件を達成しよう。そして闇へーー「いい加減にしやがれ…」ーーーえ。
「お前はいつも自分の問題には絶対に踏み込ませねェ……俺はお前のそういう所が気に食わなかった。付き合いは長ェはずなのにお前はいつも何かに蓋をして、俺たちとの距離を一定に保とうとしてた。俺たちは仲間じゃねェのかよ…!」
「………何も知らないくせに偉そうなこと言わないでくださいよ」
同じ色をした瞳がぶつかり合うーー。
「煩ぇよ。なにが何も知らないくせにだ、お前の事は意外とちゃんと見てたぞ俺は」
「カリムさんこそ、なんで蟲を持ってるんですか。あなたが犯人なんじゃないんですか?」
カリムはナナの怒りのこもったその一言に目を見開く。
「犯人だと……?お前、やっぱりこの蟲を知ってるのか」
「……なんで私に見せたんですか」
「お前に一昨日の事件と俺の考えを話す為だ。そのために俺はお前を信じたかった」
「だから…信じたいってなんですか」
「さっき俺はお前を気に食わねェと言ったが、俺が見てきた限りだと、お前が裏の社会に足を突っ込むのには必ずそれ相応の理由があると思った。だから俺はまずそれを聞いてお前を信じたかったんだ。俺の一番信頼できる部下が、理由もなくそんなことをするはずが無いと」
ーー真っ直ぐな目だった。
私は先輩方を信頼してはいたけど、カリムさんの言った通り一定の距離を置いていた。もしも気を許し、私のやっていることを知られてしまったら、真実を知ることができなくなるからだ。
「……………誰にも言いませんか」
「当然だ」
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