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ろくでなし?ひとでなし?1


体育の授業はいつも、治、角名、はなこのいる二組と、侑と銀島のいる三組で合同で行われる。一学年の運動部の生徒が二組と三組中心に分けられているのが、一組を置いて二、三組でやる理由だ。

「サムのクラス、体育委員が一番服装アカンやろ、アレオッケーなん?」

「…お前も体育委員やろ、仕事してこいや」

治の肩に寄りかかりながら、ダボダボの袖を捲り上げた腕で今日の授業に使うボールを持つはなこを見てニヤリと笑うのは侑だ。

三組の体育委員でありながら何もせずにここにいるのは、大方女子の方の委員に上手いこと言ってきたに違いないと治は推測した。
挙げ句の果てに侑は「1人でできる仕事をわざわざ2人でやる必要ないやろ」などと、完全に責任を放棄している。

「寒いっていうから貸してあげたけど、はなこが着たら俺がデカいことがよくわかったわ」

退く気配のない侑に治が諦めると、今度は侑がもたれかかっている方と反対側の肩に角名が腕を置いた。

侑が笑いながら「デカ過ぎやろ」と角名を見て言うと、角名は「はなこがチビ過ぎじゃね」とはなこを見ながら返した。

「あ、」

すると三人の視線の先で、はなこといつも一緒にいる双子や角名がいない事をいいことに、三組の運動部の男子がはなこが持っていたボールを弾き落として絡んでいるのが見えた。

「アイツら最近俺らの教室にきてはなこに絡むよね、遠回しに。好きなんじゃね」

「俺が遊び行った時はせんくせになぁ」

「侑みたいなのがいてもやるよーな度胸あるヤツじゃないっしょ、アイツら」

侑が「あんま褒めんといて!」と頭の後ろに手をやって、大げさに照れるそぶりを見せると、「褒めてねーから」と速攻で角名が突っ込んだ。

「てか、いーの?ほっといて」

向こうで男子にからかわれているはなこを遠目で見る角名は、治の肩に腕を置いたまま二人に問う。

「あ、でも、おたくらはなこに見えない所で制裁下すんだっけ?」

「俺をこの人で無しと一緒にすんな。俺はなんもしたことないし」

「ほなお前はろくでなしやな」

治の肩からうでをおろし、さらりと上から目線で嫌味を言った侑。治の額には反射的に青筋が浮かんだ。

「…はァ?ろくでなしも人で無しも全部お前の事じゃボケ。角名、コイツはホンマ酷いで。なんやったらはなこの恋愛経験奪ってきた人間やいうても過言ではないからな」

「なんやねん、お前いっつも止めへんやんけ。なんやったら乗ってくる時もあるやろ。そういうのをろくでなしとか人で無し言うんちゃいますかァ?おるよなぁ、自分じゃなんもできん癖に、欲望だけは満たそうとする奴」

「…ァア''?」

二人の話に、大体想像できるわと思いつつ、マジな喧嘩に発展しそうな険悪ムードを感じ取った角名は、ゲ、と苦笑いした。