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まんなか女子の刹那の恋3


ぽつんと取り残されたはなこが
さっきまで付き合っていた人におごってもらったパックのレモンティーを黙って見つめていると、急に視界に入ってきた大きな手が、パックを掴み取った。

ボーッとしていて気がつかなかったはなこが顔を上げると、そこには今朝一言も口を聞いてくれなかった、双子の金髪の方、宮侑がいるではないか。

『…盗み聞きしとったん?』

このタイミングで現れたということは、それ以外にないと思ったはなこは、若干怒った顔で侑を見つめ返す。

「してへんわ」

普段からあまり表情を変えないし、落ち着いている治タイプのはなこだが、"真面目すぎる"と言われた上に、それがたった1日でフラれるほど酷いというか、普通じゃないのかと、かるくショックを受けているのを、"盗み聞きしていた"侑は察している。

侑ははなこのとなりに立って壁にもたれかかり、ヤンキー座りになると、自分がさっきまで飲んでいたミルクティーのパックを指先でもって、はなこの方に持ち上げた。

「はなこはミルクティーのが好きやもんな。アイツはその辺がわかってへんなあ」

そう言って笑う侑の左手には、はなこがさっきまで持っていたレモンティーのパックがある。
はなこは素直に侑に差し出されたミルクティーを受け取って、ストローに口をつけた。

ーー なぜか、
学校で一番人気と言われている、実力もルックスも人気も兼ね揃えた先輩に告白されて付き合った時よりも、顔も合わせず、一言も口を聞いてくれなかった幼馴染が、機嫌を直していつもの笑顔でミルクティーをくれる方が何倍も嬉しかった。

『ツムの言う通りやった。はなこはココにマネージャーしにきたんやった』

「…?…あー、別に俺が言うたこと全部本音ちゃうけどな」

はなこからミルクティーを受け取った侑は、いつものようにそのままストローに口をつけて飲む。

「男前か優男か知らんけど、あんなん俺から言わしたら何も知らんぽっと出のタダの男や。なんせ俺の方が知っとるからなぁ、はなこのことは。なんやったら知り尽くしとるわ」

ーー と、得意げに、また、どこか懐かしむような顔で侑は言った。そういえば高校に入ってから、ハナよりもはなこと呼ばれることの方が多くなった気がする。

『はなこだって侑のこと知り尽くしとるし』

珍しく子供みたいに言い返してきたはなこに「いーや、俺の方が知っとるな」とヤンキー座りのまま返す侑。

『あ、そういえば合宿ん時、女子がみんなツムがええて言うとったけど、ツムはやめとった方がええ言うといたで』

「どういう意味やねん!たしかに喧し豚はいらんけど、俺に失礼やろ!!サムの方がええ言うたんか!?」

立ち上がった侑は、俺の知らんところで何しとんやと言わんばかりにはなこに突っ込んだ。

『言うてへん。みんな付き合えるならどっちでもええ言うてたし』

「…はぁ??」

はなこが何を言いたいのか、なぜそんなことを言ったのかがいまいちピンとこない侑は、眉を寄せる。怒ってはいない。

『ツムは相手が誰でも思ったこと全部口に出すし、口悪いし、他人に優しないし、人でなしやから』

「…喧嘩売ってます?」

侑は額に青筋を浮かべ、ニッコリ笑ってはなこの顔を鷲掴みにした。図星ではあるが、むしろ今この状況で思ったことを容赦なくズバズバ言っているのははなこの方だ。「私の幼馴染やから」くらい言えば可愛いが、はなこはそんな子じゃあなかったなと侑は改めて認識する。

『ツムとサムって実力は同じやんか?』

「いーや俺のんが上手い」

『でも、ツムのんがなんていうか、ストイックっていうか、ほんの少しだけ…紙一枚分くらいだけ、サムよりもバレー愛しとるなって、はなこは思うから』

「ーー !」

ーー こういうことが、たまにある。
決して説明は上手くないが、真っ直ぐな目で、随分と的を得た事を言うことが。

自分のセットで決められなかった・完璧なセットにも関わらずミスをした ーー そんなチームメイトに容赦なく思った事を言い、その日以降、自分の周りに部員が寄り付かなくなった中学の時も、たしかこんな事があった。

『ツムは多分、バレーの為にどんな事も捨てられるし、実際今までそうしてきたとこをはなこは間近で見てきたから、』

「…から?」

『そんな人に近づく価値のある人間やないなって思って』

ーー そしてこういう時、はなこは決まって侑の態度や言動に問題があることを承知した上で、はなこが自分を贔屓することも、侑はよく知っている。

「よう分かっとるやん、流石は俺の幼馴染やな」

侑はそれが 昔からたまらなく嬉しかった。

『でも、はなこも悪いかな、性格。ていうか、真面目すぎ?』

しかし今日のはなこは少しだけ弱気だ。
あのはなこといえど、昨日告白された人に真面目すぎてついていけないと、さっきフラれたばかりなのだから。

すると侑は、元気のないはなこの肩を抱くようにして腕を回すと、「アホか、真面目はお前のいっちゃんええとこやろ」とその手で頭を撫でてから、強引にはなこを連れて歩き出した。

「何も知らん奴が言うことは気にせんでええねん、俺もお前も」

『…よかった。そうやんな』

侑は歩きながら、パックのレモンティーをゴミ箱に投げ捨てた。






余談

角「え?別れたって…1日で?」

治「…ツムお前、別れさしたんちゃうやろな」

侑「はァ??そんなんせんわボケ。
まぁ一週間くらい続いたらなんかやったろうとは思とったけどな、フッフ」

治「お前マジでやめたれや」

侑「いや結局なんもやってへんやんけ!」

銀「真面目すぎて付いてかれへん言われたんやろ?あの人優男そうやのに、しかも1日でフるとか結構アレやなぁ」

角「まぁたしかにはなこあの顔でスゲー真面目だけどね」

侑「そこがアイツのええとこやねんて」

治「それな」

銀「我々が育てましたと言わんばかりに誇らしげな顔の双子」