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赤鬼の逆鱗
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赤林との約束の店のすぐ近く、コンビニとマンションの境目の細過ぎる路地でそれは起きた。
大柄な男は言っていた。”俺は手出しはしねぇ”と。俺は。俺以外のことは指していない。そんな引っ掛けに気づけるわけもなく。
路地に入った瞬間両方の出口を塞がれ、武器を持った男達に囲まれた。
「俺ら、目出井組にちょっとした商売が見つかって全員しめられたんだわ」
『……私を知ってて誘い込んだんですね』
落ち着いた声。でも内心焦っていた。この細過ぎる路地で武器を持った多人数を相手に素手で切り抜ける方法が見つからない。上を見ても、屋根が重なり合っており、飛び抜けは不可能。
『けど、私に手を出せばしめられるどころか死ぬより辛い目に合うと思いますよ』
「だからお前を殺してぇ、埋めてやるんだよぉ」
____________そういえば、彼らは全員目が虚ろだ。妙に落ち着いていたのはその所為か。今になって気付けば、嫌な臭いもする。呂律も回っていない。
『…麻薬中毒者』
それで間違いない。
「どうするぅ?お前強いんだろ?武器持ってんだろ。闘うかぁ?最強の俺らと」
『……闘わない。そういうことはもう辞めるって決めたから』
「ギャッハハハハ!お利口ちゃんかよ!じゃあ、黙って俺らに着いてこいやぁ!」
____________飛び込んできた一人目を交わした。けれどあまりに場所が狭い所為でどう避けても捕まるか、武器に当たるのは目に見えていた。
「なんとかしてみろやぁあ!」
二人目を避ける。
走って逃げよう。すぐそばに待たせている人がいる。彼に頼ろう。
そう思い、走ることに全神経を集中させた時だった。男の一人に手を無理やり引かれ________口元にガーゼらしき布を押し付けられた。
嫌な臭い。嫌な臭い。嫌な、臭い。嫌嫌
走る事に集中していて、ちょうど一気に息を吸った瞬間だった。視界が揺らぐ。思考が停止して、身体が一瞬にして重くなる。
厭
「お前、効かせすぎて殺すなよぉ!?」
いや
「うんうん、可愛い可愛い。可愛い子に、仕上げはコレだよぉ」
い
「あ!お前それ量ヤバイって!」
口に、舌に擦りつけられた粉
「相手極道だし大丈夫っしょ」
____________急降下。______。
「グァッ!!」
路地に響いた鈍い音と、男の声。
はなこを抱きかかえた男が振り返ると、チームのリーダである大柄な男の口に何かが突っ込まれているのが目に入る。
高身長オールバックにサングラス、黒スーツ姿の男が、杖を大柄な男の口にぶち込んでいるのが正しい。貫通していないのが幸いと言うべきか。
「まずその子を離してこっちに渡してもらおうか。意識がないとはいえ、そんな汚い手で抱かれちゃ困るんでね」
「ング…グォ……」
「だ、誰だテメェ!」
____________クスリ。麻薬、発動。興奮。興奮。
「君じゃ話にならないねぇ」
ドンッ。手首を素早く動かしただけで、大柄な男は喉を突かれ、飛ばされる。その反動ではなこを抱えていた男にぶつかり、男ははなこ手放す。
「おっと」
すかさず距離を詰めていた赤林がはなこを抱える。突かれた男は路地の奥で一緒に吹き飛んだ男の顔面に吐血。
赤林は完全に意識を失っているはなこをチラリと見る。湧いてきたのは言うまでもなく怒りで、それ以外の何でもない。彼女は変わろうとしていたのがわかる。いつもならこんな連中、容赦なしに迎え撃っているはずなのに。
「やっちまえ」
他の男たちが一斉にナイフやら鈍器を赤林に構える。
「君たち、この子が誰か分かって手出したみたいだね」
一瞬にして、赤林に一人狩られる。
「はなこちゃんはヤクザの子って言っても健気でね。だから…………俺が直々に教えてやるよ」
また、一人、二人
「そんな健気な子に手ェ出したらどうなるかってな」
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