×
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -
________________________
彼はわたしを殺すのだろうか
________________________


「魚は嫌いでしたか」

目の前の男は、全く手のつけられていない焼き魚ではなく、その前に座る少女の目をジッと見つめていた。
食事を始めて三十分。少女の前の殆どの皿や小鉢が空になっていたが、魚だけは綺麗に残っていた。

スーツ姿の男の問いに焦る少女。「苦手です」とも「すいません」とも簡単に口にすることができないのは、"そういう相手"だから。

「口に合わなかったのなら、店に他の物を用意させることもできますが…」

「……いいえ」

少女がやっと口にすることのできた言葉は酷く震えていた。薄紫色の瞳が漆黒の前髪の下で揺れ、無意識に肩に力が入る。

「どうかしましたか?少し顔色が悪い」

「…あ…あの……このお魚、その………ど…毒が入ってる…と思います……」

「…毒?」

「…………はい」



prev next