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謎解きを始めよう/番外編
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________…ガタンガタンッ、ガタンガタンッ
「……そんなイベントがあんのか」
『うん』
「お前が片目使い果たすくらいの相手が居たのか」
『…え? 爆豪君だよ。…あっ、そっかまだ言ってなかったね。爆豪君が優勝で、私が二位。切島君が三位だったの。焦凍君も呼べば良かったね』
幸い大事に至らなかったとはいえ、ホームに突き飛ばしたのは事実。駅には警察も駆け付けた。
爆豪も切島が二、三本先の電車で帰った頃に二人は解放され、今は電車の中だ。
「そうだな。来年は出てみるのもアリかもしんねぇ」
いつもの真顔でそう言うと、轟は今日行った菓子屋の袋から小袋に入ったクッキーを取り出し「食うか」とはなこに見せた。
『クッキー?』
「おお。予定より買いすぎた。いるか?」
嬉しそうに頷くはなこ。
はなこが広げた両手にちょんと小袋を置いてやると、嬉しそうに目を輝かせていた。そんなはなこに釣られて轟も笑みを浮かべる。
爆豪との一戦以降、記憶を奪われるような事件はあったが、ここ数日ではなこは大きく変わったように思う。表情が前よりも豊かになったし、自分から人に関わるようになった。
幼少の頃からのはなこを知っている轟は安心した。
『美味し…なにこれ』
「母さんが好きな焼き菓子の専門店のクッキーで、今食べたのがバニラ。横に入ってんのはピスタチオ。茶色がココア」
轟らしい説明を受けながら、今度はピスタチオを口に運ぶはなこ。はなこが左手に持つ小袋に轟も手を入れてココアのクッキーを取った。
「そういや昨日のHRで犯人捕まったって言ってたな。個性の複数持ちだったか」
『うん』
相澤先生が、と唐突にはなこが記憶を奪われた事件の話を轟が始めた。
昨日…金曜日の帰りのHRではなこの記憶を奪ったタクシーの運転手が逃げ込んでいたネットカフェで発見され逮捕されたと担任の相澤からA組に発表された。
犯人は個性の複数持ちで、記憶を奪う個性のほかに一定範囲内の人や建物を透過する個性を持っていたという。
それ以上の詳しい話は生徒にはなかった。(A組以外の全校生徒には逮捕されたとだけ伝えられている)
『私は昨日の朝の時点で職員室で聞かされてた』
「記憶は戻んねえのか」
『それなんだけど…ちょっと変なんだよね』
「変?」
『ほんとは話しちゃダメなんだけど、誰にも言わない?』
職員室では他の生徒たちよりも事件のことを知っているクラスメイトにも他言無用だと言われている。しかしはなこにはあの日報告された事で、どうしてもきになることがあった。
「誰かに話さねーのは当たり前だ。けどそれ…俺に話していいのか?」
『うーん』
「…いや、やっぱ困ってんなら話してくれ。力になりたい」
この歳の少年が思っていても言えないような大胆なことを真顔でサラリと言ってのける轟焦凍。
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