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欠落した記憶と、大胆な間違い電話
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病院から学校へ来た時間が三限目の始まった頃で、担任の事情聴取が終わったのが四限目の途中。そして今は昼休み。

『制服新しい…(なんでもあるなぁこの学校)』

保健室で借りた夏服制服一式と下着を着て、教室へ向かう。まさか下着まであるなんてビックリだ。

それはさておき、考えれば考えるほど記憶を奪った個性の持ち主…タクシーの運転手が何をしたかったのかがわからない。
たとえばタクシーに乗り込んだ少女を強姦し、記憶を消したのだとすれば最悪だが記憶を奪う・消す理由が成り立つ…が、はなこの身体には"何も"されていなかったことが検査で明らかになった。唯一気になったのは夏服の袖と腕の包帯が少しだけ焼け焦げていたことだが、それもそのタクシーの運転手の足取りを掴むまでは分からない。

担任の相澤は事情聴取の話を昼休み中に校長や他の教師に話しに行くと言っていた。今回のことは1-A以外には名前を伏せて全校生徒に伝わるだろうとも。

『………』

怪我もなく異常もない。身体はいつも通りなのに何かが違うこの抜け落ちた感じ。抜け落ちたものは記憶で間違いないが、果たしてどんな記憶だったのか。

こういう時、"彼"ならなんて言うのだろう。体調が悪い時や機嫌が悪い時、殆ど顔に出していないつもりだったのに気づけば隣にいて声を掛けてくれるような、太陽みたいな人。
三ヶ月で転校することが決まった時も一番心配してくれて、寂しいけどどこにいても応援すると言ってくれた。

太陽……、太陽か。彼が太陽なら、力も性格も対照的な焦凍くんは月っぽいな___________なんて考えながら教室へ向かっていると、スカートのポケットが振動した。一回以上のバイヴレーション。おそらく電話だ。

『…(家?)』

なんの話だろうと思いながらポケットからスマホを取り出すと、画面に表示されていたのは家の誰の名前でもなかった。

「えっ何で…はなこ!?え?……。うわっ勝手に押してたっぽい!間違えたっス!!」

画面に表示されていた名前は、夜嵐イナサ。




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