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テーピング29
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EIBI主催で開かれたパーティは既に始まっていた。普段、ほとんどはなこと行動を共にしている杉丸は、はなこが打ち合わせで遅れてくる為珍しく一人でビュッフェを回る。このホテルは特に肉に拘っていて、なかでも鶏肉は絶品。毎日2キロの鳥ササミ肉を食べる杉丸も気に入っており、御用達のホテルでもあった。

「あの、栄美さんの息子さんの杉丸さんですよね。こんばんは。製薬会社土塚の土塚茜です」

「…んぉ…?…(あー、さっき挨拶した社長の娘か)」

話しかけてきたのは数分前に父親と一緒に挨拶した社長のご令嬢。落ち着いた雰囲気で、グレーのドレスを着こなしている。整った顔立ちをした彼女はそういえば歳が近いらしい。
________________無論、興味はないが。

「________…わり。なんか用か?」

「杉丸さんって、コレクト5の方ですよね。英徳の…」

「おー(…誰だこいつ?)」

「やっぱりっ。私も英徳なんです。杉丸さんと仲のいいはなこさんと同じクラスなんですけど」

コレクト5の一人、栄美杉丸と話せて嬉しそうな土塚茜。両手を合わせてにっこり笑っている。
が、そうは言われても彼女のことは知らない。
なにしろ普段からまったく教室に行かない栄美は自分のクラスは勿論、はなこのクラスメイトの顔を全く知らないし興味もないのだから。

「あの、じつは最近うちのクラスで酷いいじめがあって……」

「いじめ?ほー。どんな?」

「ターゲットになった子の鞄に刃物が入ってたんです。何も知らずに手に入れたら、すぐに怪我するようなカミソリや開いた鋏が」

「うおっ、マジか。…まぁ、ハルトに言っとくわ」

ちょうど入り口にはなこの姿を確認した栄美は話を切り、土塚から離れていく。

故に彼は知らない。

「…ありがとうございます、杉丸さん」

土塚が怪しく笑っていたことを。



「あんな女、あなたには似合わないですよ」



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