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テーピング26
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「あいつ…マジでどこ行ったんだよ(電話も出ねーし。だから家の車で帰れってんだ)」

よしだ家からの帰り、家の車の中でも電話を掛けたが一度も出ない。嫌な予感は確信に変わり始めていたその時、______ヴーッ、ヴーッとスマホのバイブレーションが起動する。"はなこから着信中…"の文字。

「もしもしお前今ど「栄美杉丸」……あ?」

はなこからの掛かってきた電話に出れば、全く知らない男の声。

「今、コイツの携帯で住所を送った。この女を助けられるだけの金を持ってxx倉庫に来い」

________…プツッ。
嫌な予感は的中していた。
言われた通り、はなことのトークには通知が一件。開けば倉庫の詳しい住所が届いていた。
どういう流れではなこを攫ったのかは分からないが、男が用があるのは明らかに栄美だ。

「今から言う住所んとこ飛ばして向かって」

運転手に住所を伝え
たまにはなこが座る、今は空の席に乱暴にスマホを投げた。苛立ちが募る。
助けられるだけの金を用意しろだ?
その気になれば幾らでも用意できるだろう。

金なんて用意しない。否、必要ない。






誰もいない倉庫裏に車を止めさせ、
車から降りた栄美はまずコレクト5の証であるブラックジャケットを脱ぐ。
そしてトランクを開けて木刀を取り出し、髪をかきあげながら不良達の前へ。

男は拳と言うけれど、関係ない。
目の前の大事な女の為ならば。

「ワリーなぁ栄美。ちょっと抵抗したから殴らせてもらったぜ」

準備していたのか、此処が奴らのアジトなのか。手足をロープで縛られたはなこ。口元に痣が出来て、血が滲んでいる。

それを見た栄美の殺気、いや殺意か。
ピクリと眉が動き、眼は半眼になる。
学校では勿論、武道の大会ですらこんな顔はしない。

「お前ら________…用があんのは俺だろ。なんではなこに手ェ出した」

「コイツに手ェ出せば出てくんだろーよ…お前がなぁ!!」

「そうか。なら、________これで計画通りだな」

隠れていた不良が栄美の背後から襲いかかる。
しかしそんなことは当然想定済みであり、
想定していようがしていまいがこの程度の相手には関係ない。
回し蹴りで背後の二人を倒し、前方の三人を木刀で切るように倒す。
たかが木刀と甘くみてはいけない。木刀でも辺りどころが悪ければ重症を追うし、最悪死ぬケースだってある。

ゴッ、ボキッ……鈍い音。

栄美は不良共を一掃し、その片付けを運転手に任せはなこの元へ走る。

「はなこ!大丈夫か、返事しろ」

『杉丸…怪我してない?大丈夫?』

殴られた口元を抑えながらはなこは無事で、栄美にロープをほどいてもらうとすんなりと起き上がった。

「あんな連中に怪我なんかするかよ。…ってオメーは自分の心配しろや。殴られたのここだけか?」

『うん…。あのね、近くの交差点で信号待ってる時に話しかけられて無視してたんだけど、杉丸のこと知ってるかって話しかけられて』

「その時点で呼べよ」

『だって金髪の人が、付いてこないなら信号待ってる小学生のこと刺すって言って…………だから、ごめん』

________…卑怯な連中だ。益々腹が立つ。
連中のことは運転手が呼んだ警察に任せておけばいい。運転手だってただの運転手じゃあない。栄美家の雇った信頼ある運転手だ。

「坊ちゃん。通報は済ませました。病院へ急ぎましょう」

立ち上がるはなこに手を貸していると、運転手がブラックジャケットとブランケットを持ってくる。

短く返事をした栄美はブランケットを受け取ってはなこの肩に掛け、はなこの歩く速度に合わせて車へ向かった。

『結構ボコボコにしたんだね…』

「本当ならブッ殺したいところだぜ」

倒れている不良共に目もくれず
栄美は木刀を運転手に預けると、ブランケットを羽織、自分に背を向けているはなこを背後から抱きしめた。

彼の額と短い髪が頬まで届いて当たる。

「________________悪い。
俺のせいでお前の大事な顔に怪我さした」

心配だった。そして、こんなにも大切に思っていたことを改めて思い知らされた。

『大丈夫だよ。杉丸が助けに来てくれるって信じてたから、怖くなかったよ』

「……お前は、やっぱ強えな」




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