フワッと風に運ばれてくるのはカレーの香り。
今日は新人のうち四振りが大倶利伽羅に料理の基本を教わっているはずなので簡単なメニューになったのだろう。
新人の作るカレーは恒例イベントになりそうだ。
さて約束通り青江の手合わせに付き合っていた私だが、途中から闘気を嗅ぎつけたのか骨喰も加わり、彼らの気が済むまで付き合った結果、鍛錬場の床と仲良しになった。
一歩も動けん……。二振は仲良く湯を浴びに行ったというのに何ということだ…歳か?
「あの、鶴丸さんだけ休憩なしだったからだと思います」
なんだと……!?そういえばそうじゃん休憩してねーわ。っと、五虎退?あ、お水ありがとう、美味なり。
「それで、五虎退は何かあったのか?」
きちんと座り直して五虎退と向き合うと、虎の子が二匹よじ登ってきた。
待て待て今は羽織りないからフードもないぞ。
仕方なくいつもフードにinしてくる子は頭の上に、もう一匹を抱えて撫でておく。
この二匹には妙に懐かれているのだ。可愛いからいいけど。
「何か……というより、何もないんです」
うん?と首を傾げる。
「山姥切さんは初期刀で、小夜くんは初鍛刀でいつもあるじさまのお傍にいます」
主の1番の支えになる事。それが二人の役目だからだ。
「大倶利伽羅さんはお料理が上手で、骨喰兄さんはよく作戦を立ててくれます」
主の影響か中華が得意みたいだが、和洋折衷なんでも作ってるな。あと骨喰は立てる作戦がたまにエグい。
「鶴丸さんは本丸全体をよく見ていて、あるじさまにも頼りにされています」
決定権はあくまで主に託すが、相談はたしかに主だけじゃなくいろんな刀にされる。意見を述べることも多い。
バランサー的な役割だな。
「にっかりさんは一番強くて、鶴丸さんや骨喰兄さんの難しい作戦にもすぐについていってしまわれます」
実はつい先日、練度の高かった山姥切と私は新人教育をしている間に少しばかり青江に抜かされた。
あと柔軟性と順応性に優れていてともに戦いやすい。
「僕、僕も初期の刀なのに、僕だけが何もできません…ぐす」
そう言われれば、何かしら突出しているなと思う。初期メンバーが中心に本丸を回すのは良くあることと思うし、骨喰とか大倶利伽羅とか予想外の方向に進化を遂げた結果だけども。
新人教育を任されて、改めて本丸内の役目に気づいたってところか。
かといってじゃあ五虎退は、と言われても…
短刀の活躍できる池田屋はまだだし…
いや、あるな?