「よっ。鶴丸国永だ。俺みたいのが突然来て驚いたか?」
気付いたら鶴丸国永になっていた。
な……何を言っているかわからねぇと思うが以下略っと一度言ってみたかったセリフベスト3を言えて満足したところで状況整理だ。
私は人間だった。名前は思い出せないけど確かに人間で、性別はたぶん女。
血の繋がらない弟や妹がたくさんいて、日々駆けずり回っていた。
あっちが泣いてると思ったらこっちで喧嘩してるしそっちで転んでるような場所で育った私はそれはもうお世話スキルがカンストしていた。
一つ下の弟がいなければパンクしていたと思う。
成長するにつれヤンチャ度が増し増しになっていった彼らのせいかおかげか、対応するべく私も無駄にスペックが高くなっていった。
今思えばなぜ私は農業機械士の免許なんて取ったんだ??うち農家じゃなかったろうに。
完全に迷走してたな。
しかしどれだけ頭をひねっても死因を思い出せない。
そもそも死んだ記憶が無いし、最後の記憶がギャルゲーする弟の隣で「またお前か!!」って叫びながら鶴丸を鍛刀したことってどういうことナノ。確かに鶴丸は好きなキャラだったけど、その時欲しいのは別の子だったからつい……。
まさかそれが原因で鶴丸成り代わりってんじゃないよね??
「あの、わ、わたし審神者の稲葉です。よろしく、お願いします」
「よろしくな、主!」
そう、主。何はともあれ目の前の大人しそうな女性が今日この時より私の主なのだ。
うんうん、歳は二十歳そこそこってところだろうか。小さめな身長と童顔が庇護欲を刺激するタイプだ。
幸いにも鶴丸国永の記憶と刀剣男士の本能はインプットされてるようで、主を持つことに抵抗はないし戦への恐怖もない。
生前の家族が気にならないといえば嘘になるが、おそらく私は死んだのだろうしせっかくだから第二の人生をこの世界で楽しもうじゃないか!
そして、そんな私の意気込みが初っ端からつまずくことをこの時の私はまだ知らない。