骨喰、浦島コンビと別れた私は今日の日程である手合わせのため鍛錬場で血気盛んな若い刀たちを千切っては投げ千切っては投げとしごいていた。

嘘。古参といえどちょっとヒヤリとするくらいにはみんな鍛えられているので千切っては投げってほど圧勝は出来てない。まだまだ負けないけども。負けないけども!

顕現して四年目ともなると、全体の平均練度もかなり上がって来ている。

若い刀の代表格である新撰組刀達は初期の頃から顕現してたこともありその実力は折り紙付きだし、長曽祢はVS蜂須賀の成果が強く出ていて練度は加州たちより下なのにほぼ互角なあたり練度が並んだ時が楽しみだ。

蜂須賀もVS長曽祢の成果か、随分と邪道な戦い方への耐性が出来ていて最近は私との手合わせで驚いた顔があまり見れてないのが嬉しくも残念で、同時に頼もしい。

よっしゃもう一本!と汗だくで意気込む大和守の手から木刀を奪い代わりに水を渡した堀川が鍛錬場の入り口を見やった。

「主さん、兄弟?」

「君がここに来るのは珍しいな」

主はあまりこの場を好まない。
分かる。私も人間時代に初めて剣道部の稽古を見た時は正直引いたもんな。何がってあの奇声が。大声ってより奇声だった。
大人しい気性の主に血気盛んな男どもの稽古場はキツかろう。
暑いと脱ぎだす男士もいるし、そういう意味でもね。

だからこそ山姥切と一緒とはいえ主がここへ来たことに首を傾げるが、とうの主も少し困ったように笑んだ。

「なんか、青江さんが鶴丸さん呼んできてって……それで、私はみんなといてって」

「青江が?」

私を呼んで主を遠ざけたい何かあったんだろうが、彼らは新刀の顕現をしていたはず。
トラブルらしいトラブルが起きるとも思えないけど……まあいいか。

「みんな主を頼んだ」

「おっけー任せて」

「青江さんは鍛刀部屋です」

「了解」

そうして急足で廊下を歩く。
初期に比べると増改築を繰り返して本丸も広くなってるので端っこにある鍛錬場から中枢にある鍛刀部屋までは距離が結構あるのだ。

すれ違う仲間たちは何事もなく過ごしてるようなので、少なくとも緊急性のあるトラブルではなさそう。

やっぱり何が起こったのか検討もつかないまま、たどり着いた鍛刀部屋の扉を開けた。



その刀を見た瞬間、ゾクリと寒気に似たものが背筋を走り、なぜ青江が主を遠ざけたのか理解した。
理解、できてしまった。

彼は私と同じだ。
けれど初めて自分と全く同じ性質を持つ刀剣男士を前にして、私は仲間意識より先に危機感が襲った。






「ありゃ?久しぶりだね。えっと…しろ…鳥……?あ、そうそう!陵丸」

「いやなぜよりによってその名前で呼んだ?」


まあそれもとうの髭切が鶴丸国永唯一と言っていい地雷を躊躇なく踏み抜いてくれたおかげで呆れに変わったけれど。
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