04

しとしと霧のような雨が降っていた。
子狐姿になっていたあかりは励んでいた毛ずくろいを中断させ、座布団に丸くなる。
雨は嫌いだ。
湿気を含んだ体毛はペタリと張り付くし、温かい日差しで日向ぼっこも出来ない。なによりいつもより早く薄暗くなるせいで、妖の活発に動く時間も早くなる。と、陰陽師も忙しい。
つまり、誰も遊んでくれないのだ。

あかりはクフンと鼻を鳴らして拗ねてみる。
ただでさえ羽衣狐とかいう妖のせいで花開院当主の秀元はもちろん、どこぞの姫君の警護で是光まで暇はないというのに…。
羽衣狐も狐というからには自分と同じ妖狐だろうが、なにぶん誕生の経緯も何もかもが違う。
まだこの世に誕生して一桁のあかりは、人の子同様、まだまだ遊びたい盛りだ。
そんな彼女の遊び相手を奪う原因の羽衣狐はいくら同じ狐といえど嫌い嫌い、大嫌い!

「むーぅ!」

あかりは不機嫌に尻尾でベシベシ床を叩いた。
だが自分の我儘で秀元の仕事の時間を奪うつもりはない。

ザァァァァ……

強くなった雨音に伏せていた顔を外へ向けた。
ぴくぴくっと耳が動き、何かの音を拾う。
雨じゃない。でも水の音。水面を踏み歩く音。
ついでに鼻が拾った臭い。 この臭いは忌まわしき、

「ぬらりひょん!!」

あかりは前足を低く腰を高くして現れるであろう天敵に飛びかかる構えを取った。
昨日はまんまと逃げられたが、今日こそは燃やしてやる!
剥き出した牙の隙間からチロチロと収まりきらない炎が覗いた。
そして、

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