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その本丸はとても優秀だった。
いや、優秀などという言葉すら役不足。
歴史修正主義者が台頭したことを受け、時の政府によって作られた審神者という制度。
本丸を守る結界も、時間遡行装置も、資源も手入れも鍛刀もまだまだ開発途中のような状態で徴収された最初期の審神者たち。
戦争など右も左も分からない平和な現代を生きていた彼らにとってそこは正しく地獄だった。
ある者は血に狂い、ある者は寝返り、ある者は折れてしまった刀剣男士に心を壊した。
審神者の心のケアなどに気を配る余裕は当時の政府には無かったのだ。
とにかく戦績を上げ続けなければ、一寸先の未来に自分は存在すらしていない。
そんな状態だった。
これはそんな黎明期を最前線で駆け抜けた、無上の審神者と最強の刀剣男士。
まさに伝説というべき本丸。
その本丸の、終わりの話。
それを終わりと呼ぶかは、きっと君次第だろうけれど。
白銀の打刀はそう言って、膝に抱いたピクリとも動かないそれを撫でた。