「早くしろィ。」

総ちゃんは、S属性の冷たい顔をして、あたしを見下ろす。

キスだってまだで、ていうか、抱きしめられただけでもドキドキするのに、そんな事できるはずない。


だいたい、総ちゃん胸に傷なんて無いじゃない…。


「ホラ、どーしたァ。」

「っ、」

総ちゃんは、あたしの下顎を掴んで顔を上向かせた。


総ちゃんの指がばらばらに、あたしの下顎を、つつ、つつ、となぞる。


完璧にSモード。

総ちゃんは根本的にこういうのがいいんだな。

でも、あたしはまだ男の人も知らない田舎娘で、総ちゃんの望みに応えてあげる勇気がなくて…。

ずっとあたしがこんな調子だったら、総ちゃんだってつまらないよね。

いつか嫌われちゃうかもしれない。


嫌われる…?


そう思ったら、どんどん悲しくなって来て。


…泣きそう…。


「…総、ちゃ…、できなく、ても、嫌わな…で、」


ていうか、すでに半べそだった。


「…あー…。」


総ちゃんは、しまった、って顔をして、あたしの下顎から手を離した。

気まずそうに、栗色の髪をくしゃっとかきあげる。

「…悪かったィ、俺がいじめすぎやした。
そんな悲しそうな顔するんじゃねーやィ。」

「…総ちゃ、ん…、ごめ…、」


総ちゃん、違う、あたしに勇気がないからいけないんだよ。


「…謝んな。嫌ったりしねェから。」


総ちゃんはあたしの頭をなでてくれて、べそべその(多分)ひどい顔で見上げたのに、優しく微笑んでくれた。


「あたし、早く、総ちゃんが喜んでくれるコト、できるようになるからね、」

「…期待してるぜィ。」


総ちゃんは、あたしにデコピンして立ち上がった。


着物に袖を通しながら、あたしを見る。

「そろそろ寝ねェといけねーや。」

「……うん……。」


あたしは俯く。

まだ、一緒に居たいんだけどなぁ。








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