3
「早くしろィ。」
総ちゃんは、S属性の冷たい顔をして、あたしを見下ろす。
キスだってまだで、ていうか、抱きしめられただけでもドキドキするのに、そんな事できるはずない。
だいたい、総ちゃん胸に傷なんて無いじゃない…。
「ホラ、どーしたァ。」
「っ、」
総ちゃんは、あたしの下顎を掴んで顔を上向かせた。
総ちゃんの指がばらばらに、あたしの下顎を、つつ、つつ、となぞる。
完璧にSモード。
総ちゃんは根本的にこういうのがいいんだな。
でも、あたしはまだ男の人も知らない田舎娘で、総ちゃんの望みに応えてあげる勇気がなくて…。
ずっとあたしがこんな調子だったら、総ちゃんだってつまらないよね。
いつか嫌われちゃうかもしれない。
嫌われる…?
そう思ったら、どんどん悲しくなって来て。
…泣きそう…。
「…総、ちゃ…、できなく、ても、嫌わな…で、」
ていうか、すでに半べそだった。
「…あー…。」
総ちゃんは、しまった、って顔をして、あたしの下顎から手を離した。
気まずそうに、栗色の髪をくしゃっとかきあげる。
「…悪かったィ、俺がいじめすぎやした。
そんな悲しそうな顔するんじゃねーやィ。」
「…総ちゃ、ん…、ごめ…、」
総ちゃん、違う、あたしに勇気がないからいけないんだよ。
「…謝んな。嫌ったりしねェから。」
総ちゃんはあたしの頭をなでてくれて、べそべその(多分)ひどい顔で見上げたのに、優しく微笑んでくれた。
「あたし、早く、総ちゃんが喜んでくれるコト、できるようになるからね、」
「…期待してるぜィ。」
総ちゃんは、あたしにデコピンして立ち上がった。
着物に袖を通しながら、あたしを見る。
「そろそろ寝ねェといけねーや。」
「……うん……。」
あたしは俯く。
まだ、一緒に居たいんだけどなぁ。
.
[*前] | [次#]
▼戻る▼TOP