総ちゃんが戻って来たと分かり、どうしても顔が見たくなったあたしは、こっそり総ちゃんの部屋を訪ねた。


「…総ちゃん。」

総ちゃんの部屋の前で、小さく呼びかける。

「さくらかィ?入っていいぜィ。」

「うん!」

総ちゃんの返事に、あたしは障子を開けた。

ところが、

「!!」

そこにいたのは、布団の上で自分で傷の手当てをしている、上半身裸の総ちゃん。

「ご、ごめん!」

あたしは慌てて廊下に戻って、後ろ手でピシャンと障子を閉める。


「…何やってんでィ。早く入れよ。」

スススと障子が開いて、総ちゃんが顔を出す。


「…あ、うん、つい…。」

なんだか恥ずかしくなっちゃって…。


周囲を確認して、部屋の中へ。


あたしは総ちゃんの近くの畳の上に座った。

「…ケガ、したの?」

「かすり傷。」

総ちゃんは、なんて事ないって顔をして、アルコールを含ませた脱脂綿を傷にあてる。

地面との摩擦で出来たようなすり傷と、浅い切り傷がいっぱい。

「痛い?」

「全然。慣れてらァ。」

「そうなんだ…。」

白くて綺麗な肌なのになぁ。


あたしがぼんやり総ちゃんを眺めているうちに、総ちゃんはテキパキと処置していく。


「…包帯とってくれィ。」

「うん。」

二の腕には、治りかけの刀傷。

総ちゃんは口で包帯の端をくわえて、片手で器用に包帯を巻き付ける。

なんだか、すごく男っぽい。

つい、ぼーっと見とれてしまって、そしたら、総ちゃんがふいに顔を上げて、目が合った。

「なんでィ、見とれてんのか。」

「ちちち違うもん!な、何か手伝う事ないかと思って!」

あたしは慌ててごまかした。

「………。
手伝うこと、ねェ…。」

総ちゃんは、そんなあたしをじっと見て来る。


そしてその後、すごく意地悪な顔でニヤリと笑った。


「じゃあ、せっかくだから頼むとしやしょうか。
ホラ、ここ。」

拳を握って親指を立てて、自分の胸を指す総ちゃん。

「さくら、この傷消毒して欲しいんでさァ。舐めろ。」

「えええ!!!?」








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