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新選組屯所。
地方の田舎から上京して来たあたしは、ここで女中として働いてる。まだ見習い。
いろんな事があるけど、あたしはどんな事でも頑張れる自信がある。
だって、あの人はあたしより遥かに大変な仕事をこなしてる。
だからあたしも頑張らなきゃ、って思える。
ここは、そんなあの人が帰って来る所。
新選組一番隊隊長、沖田総悟。
大好きな、総ちゃん。
…なんだけど。
薄雲が月明かりに照らされて綺麗な今夜。
もう22時。
今日は、総ちゃんがなかなか帰って来ない。
最近、過激派攘夷志士がたむろしてる場所が見つかったとかで、新選組の中の空気は少しピリピリしてた。
偵察だけ、と土方さんと総ちゃんの二人で今日の朝方出て行ったのに。
こんな時間まで戻らないなんて。
悪い事ばかり考えてしまう。
近藤さんなら何か報告を受けてるのかもしれないけど、女中見習いのあたしが尋ねていい筈ないし、第一、総ちゃんがそういうのは嫌いだから、あたしは総ちゃんを信じて待つしかない。
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結局、総ちゃんと土方さんが屯所に戻って来たのは、日付をまたいだ少し後。
うとうとしていたあたしは、引き戸がガタガタ言う音で、はっと跳び起きた。
寝間着の上に羽織り物をひっかけて、玄関へ向かう。
そこに居たのは、土方さんだった。
「…なンだ、まだ起きてやがったのか?」
土方さんは、引き戸を静かに閉めながら、あたしを見た。
「お帰りなさい!
遅いので、すごく心配しました…。」
「…そうか。悪かったな、心配かけちまって。」
土方さんは、靴を脱いであがると、首に巻いてあるスカーフをゆるめてシャツのボタンを外し、タバコをくわえた。
「明日も早ぇだろ。もう休め。
大丈夫だ、総悟も一緒に帰って来たからよ。」
すれ違い際、安心しろと言うように、ポン、とあたしの頭に手を置いて、月明かりしかない廊下を歩いて行く。
土方さんの後ろ姿をよく見たら、隊服はボロボロで、なんで帰って来るのが遅かったのか、合点がいった。
攘夷志士の偵察に行ったのだろうけど、結局一掃して来たんだと思う。
だって、総ちゃんと土方さんが揃えば、無敵だから。
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