銀時が向かうのは、いつも彼が布団を敷いて寝てる部屋。


…そういえば、


「…あたし、まだお風呂入ってない。」


何気にそこは気にする。


「このまんまでいーんじゃね?少し匂いがあった方が興奮すんだろ。」


あたしの心配を余所に、銀時はニヤリといやらしく目を細めて笑う。

絶対わざと言ってる。


「----やっぱ嫌っ、」


わざとと解ってても、言われたら気になる、あたしは銀時の横面を平手で押しやった。


「ちょ、コラあばれんな。
別に気にしねーって。銀サン、さくらチャンだったら何でもいいんだから。」


そう言って、ばたつくあたしの額に優しく唇を押し当てる。


「〜……。」


銀時って、からかうのと甘くするのと、使い分けるのうまい。


ほだされる。


「な?」


男っぽい中に、ちょっとねだるような甘い顔で見下ろしてくる銀時。


このあたしだけに見せてくれる柔らかい笑顔が、殺傷兵器並に強力。


いつもうまく転がされているのはあたしの方かも。


結局、あたしは銀時の言うがままにされたって、それが心地いい。


「………もう。
わかったから、も、おろして。」


寝室の前に着いて、あたしは銀時の腕から床に降りた。



銀時は襖を開けて中へ入り、敷きっぱなしの布団の上に腰を下ろす。


「さくら。」


入口に突っ立っているあたしへ、来い来いと手招き。


別に銀時とのそういう行為が初めてとかじゃないのだけれど、いざやります、みたいなはっきりした雰囲気だと、どこか気恥ずかしい。


あたしがまごまごしていると、


「おいで。」


銀時は優しく微笑んで腕を広げた。



---もう、本っ当に、この人は。

どうしてそんな優しい顔してそんな優しい声で言うの。


そうやってあたしを呼んでくれるのが嬉しくて、その腕の中に飛び込まずにはいられない。


あたしは銀時に手を差し延べる。


銀時はその手を擦り抜けてあたしの手首を掴むと、ぐいと強く引き寄せた。


「わっ、」


勢いでそのまま銀時へ倒れ込む。


立ち膝で、銀時の頭を抱きしめるような恰好になってしまった。


「やわらけー。」


銀時はあたしの背中に腕を回して抱き寄せながら、胸の中に顔を埋める。


「ヘンタイ、」

「さくらが悪い。俺、さくらに触っと癒されんだもん。」


あたしの胸の中に顔を埋めたまま、安心しきって目を閉じて、まるで子供みたい。


「ばかじゃないの、」


毒づきながらも、あたしも銀時の頭を優しく抱きしめた。


ふわふわで柔らかい銀髪の中に指を差し入れて、とかすみたいに撫でる。



あたしの癒しは銀時の全部。



そう、だって、今日は銀時に癒される為に来たんだから。


今日もいっぱいあたしを癒してね。




fin.
【20090626】




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