3
「どした?」
銀時は首だけ捩って、背中にひっついているあたしを見る。
「…、」
あたしは、銀時を更に力いっぱい抱きしめながら、彼の背中に額をぐりぐり押し付けた。
なんだか、銀時がものすごく恋しくて恋しくて。
「オイオイ、今日はデレの日かー?」
銀時が冗談っぽく笑う。
「…ばか、」
…でも、確かにそうかもしれない。
だって、今日は銀時に癒されたかったんだもん。
「まーよ、ツンでもデレでも、俺ァどっちのさくらチャンも大好きよ?」
フッと微笑って、銀時は、腹の前で組まれているあたしの手に自分の手を重ねて、優しく包んでくれた。
あたしをいつも助けてくれる、少しごつごつした大きな手。
頼りになる、広くて逞しい背中。
あぁ、あたし本当に銀時が大好きだ。
少しの間、そのままの銀時の背中に顔をおしあてていると、彼がもぞ、と動いて肩越しにこちらを見た。
「…な、さくら、」
「え?」
「…俺、ケーキより先にさくらを食べたいかも。」
「えぇっ?」
ちょっと待って、という間もなく、銀時はくるりとこちらに向き直ると、軽々とあたしを抱き上げた。
「ちょっ!待っ、重いって!」
まさかのお姫様抱っこ。
重くて申し訳ない気持ちと、誰に見られてるわけでもないのに恥ずかしくて、あたしは手足をばたつかせる。
「重くねーから。じっとしてねーと落ちるぜ。」
あたしの心配など笑って流し、歩き出す銀時。
「ホラ、つかまれって。」
「…うん。」
あたしは素直に銀時の首に腕を回して掴まった。
お姫様抱っこなんて、してくれるの銀時だけ。
ていうか、銀時は何でもしてくれる。
一緒にいると、いつも大切にされてるって感じる。
銀時みたいな人に想ってもらえるなんて、あたしは本当に幸せ者だってつくづく思うよ。
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