万事屋の前に着いて、時計を見たら、21時を過ぎていた。


あたしは、階段をゆっくり昇る。


今日は忙しくて、ほんとに疲れた。

ほんとにほんとにへとへとで、仕事中のテンションも下がりっぱなしだった。


こんな時は、無性に逢いたくなる。


嫌なことも疲れも、銀時に逢えば吹っ飛ぶから。


やっと階段を昇りきって、玄関前まで来た。


万事屋の中には明かりが灯ってるから、ちゃんといるみたい。



玄関を開けようとしたら、自動ドアみたいに戸が開いた。

「っわっ、」


勢い余って、あたしは前につんのめる。


そのまま倒れ込むかと思ったら、そこには、いつもはない逞しい壁があって、あたしはそれに頭をぶつけた。


「おかえり、さくら。」


「銀時!」


逞しい壁は、銀時の胸だった。


「足音でお前だと思った。」


銀時はそのままあたしをぎゅうと抱きしめる。


銀時の腕の中は、広くてあったかくて、安心する。


お風呂あがりなのか、微かに石鹸の香りがした。


「よくあたしだって分かったね。」


銀時の胸に顔をうずめながら、あたしが言うと、


「そりゃあ、お前。愛だろが、愛。」


当然、という風に銀時は笑った。


あたしの額に口づけをして、腕を解く。


「ま、玄関先で、ってのもアレだから。あがれよ。神楽もいねーし。」

「うん。」



あたしは銀時の後に続いて中へ入った。








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