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「…総悟くん?」
「あ、なんですかィ?」
「…あの、お花は今度にしようか…?パトロールで忙しいのに呼び止めてごめんね。」
彼女におずおずと言われて、俺は自分の面がキツくなっていたのだとはっとする。
「…いや…、」
なんでアンタが謝るんでィ。
俺は…、まだここに居たい。
でも、土方さんの前で俺の女々しい姿さらすのは嫌なんでィ。
やれ巡回だ何だと口実つけないとアンタに逢いにも来れねェくせに。
「…総悟。」
彼女の顔を見ながら口ごもっていると、また土方さんに名を呼ばれた。
うるせー野郎だ。
「なんでィ、土か…、」
嫌々振り返ろうとした所で、背中を思い切り足蹴にされて、俺は車内から地べたへ転がり落ちた。
「何しやがんでィ!」
俺が怒鳴ると、土方さんは運転席に乗り換えながら、俺を見下ろす。
「あー、俺はライター買いに行くからよ。総悟、テメーは歩いて帰って来い。」
「…え…、」
「猫かぶってたって、どうせバレんだよ。ほどほどにしとけよ。」
しらっと言うと、土方さんはパトカーを発進させて行っちまった。
……だから、気にいらないって言ってるんだ、土方コノヤロー。
「総悟くん、大丈夫?」
「あぁ、大丈夫でさァ。」
俺は、彼女の差し延べられた手を取って立ち上がる。
「…ふふ、仲がいいのね。」
隊服についた土を払う俺を見ながら、彼女はまた、くすっ、と微笑った。
「どこが。」
…なんで、そう見えるんだか。
俺は土方なんて大嫌いだ。
でも、まぁ…。
今日くらいは感謝してやりまさァ。
「…せっかくだから、花買って帰ります。
選んでもらえますかィ?」
「喜んで。」
また今日も、アンタの笑顔が見れたから。
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