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「ご、ごめん、晋助!」
さくらは急いで掛け布団を彼に被せた。
「…おい。」
彼の顔まで布団に埋もれたが、気にしない。
「あたしもう起きるから…、」
布団から出ようとすると、
「さくら。」
彼がさくらの腕を掴んだ。
「まだ、居ろ。」
彼の腕が腰に絡みついて、再び布団の中へ。
彼の腕の中にすっぽりおさまり、ぎゅうっと抱きしめられる。
彼の胸。
大小の傷痕が無数についていた。
それでも、男性にしては綺麗で滑らかな肌をしている。
さくらは、彼の背中に腕を回して、その体を抱きしめ返した。
彼の強い抱擁は、これ以上無い程にさくらを幸せで満ち足りた気持ちにさせてくれる。
あたしの「大好き」も晋助に伝わってる?
「…あったけぇ。おめぇを抱いてると便利だな。」
「あたしは湯たんぽじゃないんですけど!」
「…冗談だ。ムキになるんじゃねェよ。」
彼はからかうように笑う。
さくらはその表情を、彼の腕の中からこっそり見上げる。
彼のこの笑顔は、きっと、本当の笑顔。
晋助が、いつもこうして笑えたらいい。
さくらはそう思う。
彼の思想には従うけれど、歪んだように嘲笑うあの表情は何だかひどく悲しげだから。
「晋助。好き。」
さくらは首を伸ばして、彼の唇にそっと触れた。
瞳を開けると、そこには彼の意外そうな顔。
「…自分からとは珍しいじゃねェか。昨日の晩だけじゃ足りなかったかァ?」
クク、と喉を鳴らし、不敵に口角を上げる。
「い、今のはそうじゃなくて…、」
さくらは慌てて身じろぐ。
行為が嫌ではないけれど、今は昼、そういうつもりで口づけたわけではない。
ただ。
「………晋助とね、こうやってずっと一緒に居たいって、思ったの。」
あなたが、愛しくて、愛しくて。
「あァ。」
彼のたった一言の短い返事は、愛の言葉と同義。
こうして強く強く抱きしめてくれるこの腕のぬくもりがあるなら、他に欲しいものなんて何もない。
fin.
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