---2日後。


休み明け。



朝のHRの時間。


定時を過ぎても担任は現れない。

3Zの皆は好き勝手に時間を過ごしてる。



まだかな、銀八先生。


風邪でもひいて休みとか?


そんなはずないか。


早く来ればいいのに。




---なんとなく、顔が見たいと、そう思った。




「ねー、お妙ちゃん。今日って銀八先生休み?」


あたしは、前の席のお妙ちゃんの肩をたたいた。


「来てるわよ。でも校長に呼ばれてるみたい。」


「え、なんで?」


「出張の日、寝坊して夕方から講義に参加したのがバレたんですって。」


…出張の日…?


「銀ちゃんはそのたるんだ性根を直さないとだめネ。悪い教師の見本アル。」


横から、神楽ちゃんが酢昆布をくわえながらニシシと笑った。



---出張の日。


#NAME3#。


あたしの誕生日。



先生は、出張の日を勘違いしたと言った。



…ううん、違う。



先生は前の日からちゃんと準備してた。


間違えたりするはずない。


寝坊なんてしていない。




その日、先生は、昼間はずっとあたしのバイト先で…---










---はっとする。



これは限りなく確信めいた憶測。


---どうしよう、居てもたってもいられない。




---…先生、銀八先生、





「さくらちゃん?」


「さくら、どうしたアル?」

「---ごめん、あたしちょっと…!」


お妙ちゃんと神楽ちゃんの二人に呼び止められるのも構わずに、教室を飛び出した。



廊下を駆ける。



---ありえない。



こんな簡単に気持ちは変わるものなのだろうか。



だってあたし、フラれたばっかりだなのに。



それなのに、たったこの3日間で。



いや、もしかしたら、ずっと前からあたしは---









---バカな先生。




#NAME3#。




傍に、いてくれたんだ。


仕事、犠牲にしてまで。


だからあんなに真剣にパソコンと向かい合ってたんだ。


講義一日分の課題をこなしてたんでしょう?


ねぇ先生、それはどういう意味?

先生のクラスの生徒だったら、皆にそうなの?




---それとも、あたしにだけ?





あたしの上履が廊下を駆ける足音と、聞き慣れた安物のサンダルがやる気なく響かせる足音が重なった。


校長室から出て来て、いつもと変わらずだるそうにこちらへ歩いて来る男。




(……銀八先生、)



あたしは立ち止まる。



「---さくら。
どうした?HRの時間過ぎちまったから、迎えにでも来てくれた?」


校長に搾られた筈なのに、先生は、何事も無かったかようにいつもの調子で言った。


「…聴きに来たの、あたし。」


「あん?」


「…#NAME3#、やっぱり出張だったんじゃん…。」


あたしの誕生日だって知ってて、だから居てくれたんじゃないの?

そう思うのは自惚れ?


先生に期待しちゃ駄目?




---あぁ、尋ねたい言葉こそ全然口に出せない。




もごもごと口ごもるあたしを、先生はただ見つめ返して来る。


勢い余って教室を飛び出して来たものの。


引っ込みがつかなくなった気まずさに、あたしは俯いた。





.










[*前] | [次#]


▼戻る▼TOP



「#オメガバース」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -