なんやかんやで新八と神楽も家族のもとへ帰り、万事屋には攘夷4人が残った。 「やっとうるせーヤツらもいなくなったな。」 「また心にもない事を。淋しそうな顔をしているぞ、銀時。」 「ばっ…!ヅラァァ!!んなわけねーだろ!!」 「素直じゃないのー。」 ピンポーン… 「おい、銀時ィ。また誰か来たんじゃねェかァ?」 「あん?やっとこたつに入ってどれ酒でも飲んでくつろぐかって時にどこのどいつだコノヤロー。」 「いいから出ろ、銀時。客人をあまり待たせるものじゃない。」 「チッ。 はいはいわかりましたよー。ったくどーでもいーヤツだったら詫びに酒買いに行かせてやるからね、俺は。」 ブツブツ言いながらのろのろ玄関に向かう銀時。 ピンポー… 「はいはいそんな鳴らさないでも今出ますよー… 言いながらガラリと引き戸を開けると… 「…まったく。お客様はお待たせするものではないと教えたのを忘れましたか?」 「…………」 銀時は絶句する。 「さぁさぁ、外は寒いですから、中に入れて下さい、銀時。」 そう言ってたたきから上がり、目の前を通り過ぎて居間へ向かったその人は。 「しょ、松陽先生…!?」 桂は目を見張る。 「いや、まさか、だってあなたは…。」 「嫌ですね、幽霊でも見るような顔をしないでくれますか、小太郎。私は正真正銘、吉田松陽です。」 「あなたがかの有名な…!」 辰馬が感嘆の声を上げる。 「ほ、本当に…!? 」 桂はまだ半信半疑で、目の前の人物を凝視する。 「ええ。年末シリーズでJOYするなら、私が締めでもいいでしょう?」 幼い記憶に残る笑顔そのままで、にこりと微笑む松陽先生。 「…松陽、先生…。」 桂は、ぎゅっと唇を噛み締めて、ゆっくり師に歩み寄る。 「小太郎、ずいぶんいい男になったじゃないですか。もっと顔を良く見せて下さい。 …たくさん、辛い思いもして来ましたね、いろいろな事を乗り越えて来ましたね。」 慈愛の眼差しで、優しく包み込むように言葉を掛けてくれる師。 確かに、厳しい人ではあった。 けれど、それ以上に、広く温かで、慈しみに満ちた人であった。 「松陽先生…、俺は、俺たちは…っ、」 思わず込み上げて来るものに、桂は言葉を詰まらせる。 「大丈夫、言わなくてもわかっています。」 「…先生…、」 静かに腕を伸ばして、桂の肩を優しく抱いてくれる師。 桂はそのまま、その広い肩に顔を埋めた。 「…お会いしたかったです…、松陽先生…!」 「えぇ、そうですね。ね、小太郎。だから、またこうして会えてよかった。」 「…晋助。」 松陽は、桂の肩を抱きながら、先ほどから茫然と立ち尽くしている高杉に顔を向ける。 (5-Aへ) |