誰にもやらない | ナノ

背徳者として擯斥せられの企画提出作品。
来神臨也×情報屋臨也→静雄。

*

「やっほう、俺。元気?」

憎たらしい笑顔を浮かべて、ひらりと手を振る俺は何処からどう見ても俺自身で。
あ、またこの夢か。と俺は一人胸の中で舌打ちした。


俺は週一の間隔で昔の俺と逢う夢を逢う。場所は母校であり、現在も名前を変えて存在する来神高校。その屋上に夕暮れをバックにフェンスに寄りかかる学ランの彼に出会うのだ。

「…気分は最悪だよ、俺」

ばたん、と本館へと続く扉を閉めながら俺がぶっきらぼうに吐き出せば、くすくすと高校生の俺が笑った。
それに対して鋭い視線を向ければ、高校生の俺は更に楽しそうに言葉を口にした。

「流石、俺。世界で俺の考えた事をそっくりそのまま返して来るのは君くらいだよ」

それは、俺だからね。と言葉を返そうと思って止めた。云わなくても俺ならば分かっている筈だ。
お互いに黙ったまま、見つめ合う。何時まで経っても沈まない夕日を背景に高校生の俺は呟いた。

「…まだ、シズちゃんを好きなの?」

唐突に放たれた過去の自分の言葉に俺は思わず引きつった笑みを浮かべた。そうか、高校生の俺はシズちゃんへの気持ちに気付いていたのか。だと云うなら、俺は何年も恋心を抱いているのか。そう考えるととても愉快で、馬鹿馬鹿しく感じられる。
俺は直ぐに余裕のある笑みを浮かべて、肩を大袈裟に揺らした。

「そうだね。いや、昔以上にシズちゃんが好きだ。ほんっとう、殺したい程愛してる」

「……ふぅん」

すると、今まで楽しそうだった高校生の俺が顔を歪ませて不満そうに気のない相槌を打った。俺の素直な態度がつまらないのだろう。こうなると、俺の方は愉快な気持ちになり、大声を出して満面の笑みを零した。

「あの、金色に輝く髪が好きだ!サングラス越しの怒りに満ちた瞳が好きだ!バーデン服にすらりとした身体が好きだ!額に浮かぶ血管も、無愛想な表情も、化け物な人体も全て大好きだ!愛してる!」

「………」

好きだ、と叫ぶ度に高校生の俺の顔はどんどん歪んで行く。それが楽しくて愉快で堪らない。自分でも過去の俺を苛めて何が楽しいのか分からないが、只ざまあみろ!と胸の中で嘲笑った。

そんな中、ふと高校生の俺が小さく呟いた。

「じゃあ、俺は?俺は俺を好き?」

「は、」

突然、問い掛けられた言葉に俺は笑うのを止めて、目の前の高校生の俺を凝視した。赤い眼を真っ直ぐ向けて、真剣な眼差しで俺を貫く。ああ、俺、こんな表情も出来るんだと他人事のように考えながらも無言のまま見詰めていると、不意に高校生の俺が俺に近付いてきた。

「俺は、未来の俺が大好きだよ。本音を云えば、シズちゃんなんかよりずっと愛してる。未来の俺は、俺をどう想ってる?」

高校生の俺がどんどん近付いて来る。俺は黙ってその様子を見詰めていた。身体が全く動かない。夕日で赤に染まった高校生の俺の身体より赤い瞳に射られて、そのまま身体を倒された。呆気なく屋上の床に落ちる俺に馬乗りになり、高校生の俺は歪んだ笑みを浮かべた。

「好きだよ、俺。シズちゃんなんかより、化け物なんかよりも俺を見て」

それから、小さな唇が俺のそれに吸い付いて来た。絡み付く舌と身体に俺は早くこの夢が覚めるように、願いを込めて目を瞑った。







何時もワンパターンですみません…イザイザは正義!また機会が有ったら書きたいなぁ。
100708

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