2012年あけおめ芭曽 | ナノ
「……そ、曽良くん」

「なんですか」

「年、明けたね」

「………………」

おずおずと切り出した師匠の言葉を弟子は無言で返した。ただ真顔で茶を啜る曽良に、芭蕉はどうしようと頭を捻らせていた。事の始まりは、曽良だった。夜中も更け、もうすぐ年が明ける10分前くらいにいきなり訪問してきたのだ。そして、さも自分の家のように寛ぎ始めたかと思うと、「茶」とお茶を請求してきた。渋々と芭蕉が茶を用意してる間にも年は明け、新たな年明けを迎えてしまった。一人寂しく年明けよりは明るいかも知れないが、寡黙な弟子と年明けはそれはそれで気まずい雰囲気が流れていた。早く帰らないかな、松尾、一人でエア俳句読み大会したい。とか考えていたら、不意に曽良が湯呑みを静かに下ろした。まさか、考えていることが読まれたのかっ!?とびくつく芭蕉に、曽良はほう、と小さく息を吐いた。

「……芭蕉さん」

弟子に入ったときから、ずっと呼ばれてきた名称が告げられる。無感情な低温の声音、俯き瞳に掛かった長い睫が揺れる。若く綺麗な顔立ちの彼は、たまに見惚れるほどの妖艶を放つ。ただ曽良を見つめる芭蕉に、彼はゆっくり瞳を上げて口を開いた。

「お茶、冷めてるんですが」

なに飲ませてるんですか、はっ倒しますよ。と何時もの口振りで辛辣な言葉を投げられ、芭蕉は我に帰り慌てて謝った。

「ご、ごめん、はっ倒さんといて!いま、新しいの入れるから……」

正座を崩して立とうとする芭蕉の手を、曽良のそれが引き留めた。驚き顔を上げた芭蕉の目に、無感情なのに深く綺麗な曽良の瞳が映る。曽良は、いつもの、いつもの表情のまま、ぐらりと身体を落とした。ぽすん、と曽良の頭が芭蕉の肩に落ちる。思わず強張る芭蕉の身体に凭れたまま、曽良が静かに言葉を落とした。

「お陰で身体が冷めてしまいました。責任取って暖めて下さい」

素直じゃない、辛辣な愛弟子の貴重な甘え。芭蕉は目を丸めたあと、ゆっくりと曽良の身体を抱き締めた。本当に、本当に、この弟子は。溢れる愛しさに芭蕉はじわじわと口角に笑みが広がるのを感じながら、幸せを噛み締めた。






おがふると悩んで、やっぱり芭曽で(笑)
今年もお願いします^^ハニー!
120101

笹乃木
×
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -