忍が一般の人間と一線を引きたがる風潮はどうしたって無くならないし、せっかくの飲み会だ。
俺が我慢すれば彼女に嫌な思いをさせずに済むならそれでいい。
そう判断して香水臭い女達の席へと移動したけれど――…
(やっぱり格好つけたりするんじゃなかった)
なんて後悔したところでもう遅い。
はぁ、と重い息を吐けば、杯の中の透明な液体がとろりと揺れる。
次々と注がれる酒を煽ったところで酔えるわけがない。
奥の席からはゲンマと雅美ちゃんが仲良さげに話している声が聞こえる。
楽しそうな笑い声を味気ない酒の肴に、こっちは湧き出る殺気を抑えるのに精一杯だった。
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