カカシ先生長編改造計画 | ナノ

待機所の仕事


イルカさんは何も知らない私に、仕事内容から忍というシステムについてまで、とても親切に教えてくれた。

この世界で忍者というのは、とてもオールマイティに仕事をこなす万屋のような存在だった。
任務は簡単なものから難しいものまでいくつかのランクに分かれていて、忍の能力に合わせて振り分けているらしい。
任務後には必ず報告書を提出する決まりがあり、ここは上忍の待機所と同時に任務報告書の提出場でもあるそうだ。

イルカさんは少しだけ席を外すと言って、私に簡単な仕事を任せて待機所を後にした。
初仕事に緊張しつつ、提出された任務報告書をランク別に仕分けしながらファイルに挟んでいると、
不意にチーンという高い音が響いた。
それが受付カウンターのベルだということに気づき、狼狽えてしまう。

(どうしよう、今私しか居ないのに…。)

「なんだよ、誰もいねーのか?」

とにかく対応だけでもしなければと、慌ててカウンターに向かった。
報告書を受け取るだけなら受け取って、もしそれ以外ならば待っててもらえば良いだろう。

「す、すみません!お待たせいたしました!」
「あれ?新人か?」

カウンターの向こうに立っていたのは、頭をすっぽり覆うように布を巻いた若い男性だった。
口には金属の細い棒を咥えている。
転んだら危ないのに、なんて的外れなことを考える自分に苦笑してしまう。

「今日からここで働かせて頂くことになりました、多田雅美と申します。」
「へぇ、一般人がここで働くなんて珍しいな。俺は不知火ゲンマ。…お前、年はいくつだ?」
「あ、…23、です。」
「23??随分若く見えるな。ってか、お前可愛いな。」
「…………。」

(なんか、カカシさんといいこの人といい、忍者ってみんなこんな感じなのかな。
もっとストイックなイメージだったけど、この人なんかもろナンパだし。)

どう返事をしたらいいものかと答えあぐねていると、待機所のドアが開いた。

「どうもゲンマさん、お疲れ様です。」

タイミング良く帰って来てくれたイルカさんに心から感謝をする。

「すみません、雅美さん。一人にしてしまって…。」
「いえ、お帰りなさい。早速ですけどここでは報告書を受け取るだけで良いんですか?」
「一応ざっと確認をしてから受け取るようにしてます。じゃないとひどい報告書出す人もいるんですよ。」

イルカさんに報告書の見方を教わっていると、ゲンマさんがぐっとカウンターに身を乗り出してきた。

「イルカ、雅美の歓迎会やろーぜ。」
「ああ、いいですね。久しぶりの新人ですし、是非やりましょう!」

ゲンマさんの突然の提案に私は慌てて首を横に振った。
いきなり呼び捨てにされた不愉快さも『歓迎会』の一言にすっかり飛んでいってしまった。

「そんな、歓迎会だなんて!」

いつまで働けるかも分からない状況だし、そもそもそこまで長い間働くことにはなってほしくない。
そんな私を大っぴらに歓迎されても困ってしまう。

「なんだよ、遠慮すんなよ。雅美の分は俺が出してやるから。」

そういう問題じゃないと抗議する間もなくゲンマさんはカウンターから離れて行ってしまった。
カカシさんに相談しなければ。
何だか初日からどたばたしてしまい、ちょっとだけこの先が不安になった。



「ゲンマさん、雅美さんにちょっかい出すのは止めたほうがいいですよ。」
「……なんだよそれ。」
「恐らく、彼女はカカシさんの恋人かと…。」
「本当かよ!?へぇー、あの人が特定の恋人作るなんて信じられねえなぁ…。」
「一緒に暮らしているような口ぶりでしたし、間違いないです。俺も無言で釘を刺されましたから。」
「ふーん。」

こそこそと話しながらこちらをチラチラ見る二人に少し不快感を覚えたが、無視して報告書に目を通す。
覚えなければいけないことがたくさんあるのだから、いちいち構っていられない。

「イルカさん、報告書は問題ないと思います。」
「あ、はい。ではゲンマさん、お預かりしますね。お疲れ様でした。」
「んじゃ、歓迎会については俺が適当に話進めておくわ。」
「あ……、」

ちょっと待ってください、と声をかけようと手を伸ばしたが時既に遅し。
ゲンマさんはどろんと煙を立てて消えてしまい、私の手は虚しく空を掴んだ。


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