ラーメンを食べ終えて一息つくと、隣で雅美ちゃんが唖然と俺を見ている。
「た、食べるの早いですね。
というか、口に運んでるところ全然見えませんでしたけど??」
「あー、忍の習性ってやつでね。
雅美ちゃんはゆっくり食べてちょーだい。」
「は、はぁ。」
頬を赤くして、はふはふと夢中でラーメンを啜る彼女を見ていると、
心の奥にポッと小さい明かりが灯るような温かさを覚える。
(和む……。癒し系だね、雅美ちゃんは。)
「ごちそうさまー。お代ここに置いておきますネー。」
「おう!カカシ先生また来てくんな!」
暖簾をくぐり外へ出ると、彼女が俺に向かってペコッとお辞儀をした。
「すみません、カカシさん。ごちそうさまでした。」
「いえいえ、おいしかったでしょ?」
「はい!ファンになっちゃいました!」
雅美ちゃんはとても人懐っこい笑顔を見せる。
彼女がはしゃいだように微笑むと、自然と俺も笑っていた。
ニコニコと雅美ちゃんは俺を見上げて、俺はそんな彼女をやはりニコニコと見下ろす。
傍から見ればきっと異様な光景に見えるのだろうか。
それでも俺はこの穏やかな空気が酷く心地良かった。
「じゃ、洋服なんかを買いに行こ――「カカーシせーんせ!」」
嫌な予感がしながら、ゆっくりと振り向く。
そこにはナルトが呼んだのか、サクラを始め、サイ、イノ、チョウジ、シカマル、キバ、シノ、という面々が揃っていた。
「……なにヨお前ら、集まっちゃって。」
シシシと眼を細めて嫌な笑顔を見せたナルトは、俺に向かってビッと親指を立て、
「カカシ先生の彼女を見に来たに決まってるってばよ!」
そう得意げに言い放ってくれた。
ゲホゲホ、と咳き込む雅美ちゃんの背中を軽く叩きながら溜息を零す。
こんな時だけは素晴らしいチームワークを見せる彼らは、
面白い程慌てふためく彼女を興味津々に見ていた。
「もー、先生も隅におけないなぁ!いい年なのにいつもぼーっとしてるから、
絶対彼女なんかできないって心配してたんですよ!」
「いつ見ても変な本ばっか読んでるしな!」
「でも、こんなに可愛い人がカカシ先生の彼女だなんて!いっがーい!」
「モグモグ、確かにイノの言うとおり、先生って面食いだったんだね。」
「お前らネー……。」
思い思いに喋り続ける若い忍者達。
「…二人きりでいるからといって、恋人同士だとは限らない。」
「確かにナルトの証言ですからね、全く信用ならないですね。」
「なにをーーー!!サイ!お前はホントーにいやな奴だってばよ!」
「…………。」
(俺って本当に威厳ないのネ……。)
ちらりと雅美ちゃんを見ると、ナルト達の勢いに口を開けたまま唖然としている。
あんまりにも無防備な表情をしているものだから、ちょっと吹き出しかけてしまった。
「ハイハイ、そこまで。」
二つほど手を叩いて注目を集める。
条件反射なのか横一列に並んだ小さな忍達に、思わず苦笑した。
(さて、どう説明したもんかねぇ……。)
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