カカシ先生。
そう呟くと、彼は右目だけで驚いて見せた。
「え、俺のこと知ってるわけ?
俺を先生って呼ぶってことは君アカデミー生なの?」
「あ…、あの、友達から聞いたというか……。」
「じゃあ、その友達が木の葉のアカデミーに通ってるってこと?」
「いえ、友達はただのOLです。あの、アカデミーってなんですか?」
「…アカデミーは忍者のための学校。オーエルって何?」
「えっと、OLは職業のことで――「ドン!!」」
机を叩く大きな音にビクッと身体が震える。
「お前ら、私を無視して何をくっちゃべっている……。」
金髪女性が世にも恐ろしい形相でこちらを睨み付けながら、低い声を出す。
(こ、怖い!)
「…ドーモスイマセン。」
彼は左手で頬をポリポリ掻きながらばつが悪そうに謝る。
この人が仮にカカシ先生ならば、私が今いるこの世界は漫画の中、
そういうことになるのだろうか。
なんだかすごくバカバカしいことを考えているような気がする。
カカシ先生(仮)が事の経緯について話し始めたのをどこか遠くに聞きながら、
もう色々考えるのがどこか面倒になっていた。
―――――――――――
「なんだい、結局名前しか分ってないじゃないか。
お前それでも上忍かい!?」
黙って話を聞いていた金髪女性は、呆れた様にカカシ先生(仮)を叱咤した。
「…名前しか理解できなかったんですヨ。この子の言ってること。」
少し剥れたようにそっぽを向いて、彼は呟いた。
二人の会話から、金髪女性がどうやら火影という存在なのだと知る。
友人から聞いた話では“火影”は一番強い忍者で、
その土地の長的存在だと理解していた。
しかしそこにいる金髪女性はどう見ても20代半ばにしか見えない。
「雅美といったな。」
パッと金髪女性と眼が合い、突然自分に話が振られたことに驚きながら返事をする。
「は、はい。」
「お前は自分の状況をどう考えている?」
ここは漫画の中の世界であり、
どういう訳か自分はこの世界に紛れ込んでしまった。
…なんてことを説明しても信じてもらえないことは明らかである。
当たり前だ、自分でも全く信じられないのだから。
「あの、恐らく理解していただけないと思うのですが…。」
「かまわん。思っていることを聞かせてみろ。」
金髪女性の目は、真っ直ぐと自分の姿を捕らえている。
その視線は全てを見透かしている様で、
この人に対しては変に誤魔化したりしないほうがいい。
そう判断して、私はとにかく全てを話すことにした。
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