柳くんと宿題

「宿題を後ろから前に回せー」

と、いう数学教師の声により生徒が一斉に数学の宿題プリントを一番後ろの席の人から前へと回し始めた。さてわたしはというと、昨日蓮二直々に教えてもらったからその点完璧なのだ。逆に蓮二に教えてもらってまでできなかったとなれば蓮二に半殺されてしまう。わたしは昨晩、蓮二の飴無し鞭指導の中必死にプリントを埋め、宿題を完成させた。この指導最中のことは思い出すのも辛すぎるので回想はしないでおこう。

わたしは後ろの席の子から束になったプリントを受け取り、自分のプリントを重ね、前の席の子に回した。うんうん、この提出時の解放感っていうのはまったくたまらない快感である。


「……やっべえ」


……の声は丸井ブン太のものだった。ブン太は同じクラスで今は席が右隣。(ちなみにブン太の後ろは蓮二である。)横目でちらりと伺い、ブン太が鞄をまさぐる姿を見ると……くくく……どうやら奴は、宿題を忘れたらしい!


「あんれェー? どぉーしたのかなァー丸井くぅーん? もしかしてェー宿題、忘れちゃったのかなァー?」
「きもちわりー顔で話しかけてくんじゃねーよ豚」
「豚が豚って言ってどうすんのウケる」
「その馬鹿にしたような目を今すぐヤメロ」


彼は、なんだか(半径1m以内に侵入したら美味しく焼かれそうなほど)近寄りがたいレギュラーメンバーの中では、ジャッカルくん同様にレアな親しみやさを持つ部員だと思う。その親しみやすさが返って仇となり、わたしとブン太とは現在喧嘩友達的な関係を築いてしまっている。というわけでこのような口論も日常茶飯事である。


「テメーだってどーせ同じ口だろィ」
「ぶっぶー! 残念でしたー今回は違いまーす! リーサルウェポンを持つわたしの前では、数学の計算プリントなど、在って無いに等しい!」
「ま、まさか…柳、お前…!?」


驚愕の目を向けるブン太に蓮二はさらっと
「手伝えと言われたから手伝ったまでだが」と言う。豚は腹に傷を抱えたかのようにのたうち回った。


「最終兵器幼馴染みとはまさにこのこと……! 残念だったわね子豚ちゃん!」
「てめぇそれはずりィだろィ!」
「お前ら2人! うるさい立ってろ!」


ついついわたしとブン太は声を荒げて言い争ってしまい、気づいたら授業を始めていた先生にチョークを投げつけられてしまった。ブレザーにチョークの白い粉がついたことを抗議しようとしたが先生があまりに恐ろしい形相で睨むのでおとなしく立った。


「ちっ……覚えてろよ豚女」
「自業自得よプニプニ豚男」
「大体柳はズルい、柳は」
「丸井、俺がタダで教えてやると思っているのか?」
「は?」
「お前たち2人の会話を聞いていると、この馬鹿幼馴染がなんの苦労もせず俺に教えてもらったようだが」
「……? 違うのかよ?」
「そうだそうだ!んもう超苦労したんだから飴無し鞭戦法!もう聞くも涙、」
「向こう1週間こいつは俺のパシりなんだぞ」
「話すも涙の……………………………………………………………………………………………………………………エッ」

2012/12/01/fri

「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -