柳くんと朝

「蓮二さん迎えに来たよねーちゃん」
「ええぇえ!?もう!?もうかよ!!」
「……ねーちゃんまだ着替えてねえのかよ……」

まだパンを右手に牛乳を左手に朝のめ○ましテレビをぼやぼや見ている時に弟から声がかかった。弟の口から「蓮二」の名前が出た瞬間にわたしは朝のまどろみから 瞬 時 に 覚醒し、パンを口に放り込んで牛乳で無理矢理流し込み(かなりむせた)、洗面台で髪を整え、部屋に戻ってパジャマを脱いで制服を着て、鞄に教科書とノートと昨晩蓮二に手伝ってもらった数学の宿題プリントを放り込んで玄関に到着。かかった時間はものの10分である。ちなみにこの過程は、蓮二が迎えに来れない朝練のような日の場合数倍かかる。

「い、てきます!」
「ねーちゃん蓮二さんがいないとほんとダメだな」
「うっさいいい」

玄関を飛び出すと家先の道路に蓮二が本を読んで立っていた。わたしに気づくと蓮二は本を閉じ鞄にしまい、呆れた顔しておはよう、と言った。

「お前は俺がいないとほんとうに駄目だな」
「さっき同じことを言われたよ弟に」
「俺が来るまで着替えてもいなかっただろう?」
「うん」
「………まあ仕方ない。お前の母親から直々に朝の送迎を頼まれたからにはきちんと役目をこなさなければならないしな」

わたしの母親は連日遅刻を繰り返すわたしを見かねて、朝きちんと学校に行けるよう蓮二にお願いをしたのだった。わたしは一人で行けるし!!!と最初はつっぱねたものだが、蓮二効果はてきめんだったもので(遅刻がゼロになりました!)今はわたしからもぜひお願いさせていただきたいところなのである。

だけれど、そんなわたしの生活リズムのためにも、はたまた進級の権利を獲得するのに必要な単位のためにも欠かせない蓮二の朝の送迎のデメリットが1つだけある。

「………蓮二」
「なんだ」
「今日も絶好調だね!」
「何がだ?」
「公衆の視線が!!!!」

女性から注目されることだ。いや、女性の皆様はわたしを注目している訳ではなく蓮二を注目していることはよくわかっている、わかっているのだが、この状況は、動物園のゾウやキリンやサルの気持ちが痛いほどにわかるというか………やりにくいのだ。全く以て、やりにくいのだ!!!

そりゃもうわたしの幼馴染み柳蓮二の美しさといったら世界三大美女も夢中になること間違いなし(蓮二ファンその1談)だ。身長は高いし髪さらさらだし肌白いし鼻高いし?それは幼馴染みのわたしとしては誇りに思うところさ!!しかし、蓮二は注目を浴びることに慣れている部分があると思うが、今まで客席側の人間だったわたしには、これはもうたまらなくきついんです……!!

「もう蓮二罪だよその美しさは。もう妖魔なのかお前は。見たものを虜にする妖魔なんだな」
「そうか。ありがとう」
「余裕しゃくしゃくですね腹立つ!!」
「しかし、今日はそれだけではないと思うぞ」
「え?」
「お前」
「はぁ?わたしぃ?」
「ハイソックスの色が左右違うぞ」

はぁ?何言って………と足元を見る、と、右足が黒で、左足が、し、白い……………………。

「………………………ちょ、うわ、まじ、か。………………まじかああああ!!!!蓮二!!!!いつ気付いた!!!!!」
「朝一で」
「なんっ…!?なんで言わないの!?」
「面白かったからだ」
「うぐっ……!蓮二なんか!!!!蓮二なんか妖魔じゃない悪魔だ!!!!サタンだ!!!!ルシファーだ!!!!」
「そんな超上級悪魔で例えてくれるなど光栄だな」
「え、誉めてないよこれ誉めてない」

こんな感じでわたしの1日は始まります。



2012/02/24/fri

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