日向でふにゃふにゃごろごろねっころがる時間が好きだ。家に人が居ないときは更に。この家の人々はあんまり僕が好きじゃないみたい。ならご飯ださなきゃ良いのに、邪魔だと打ったあとに何事も無かったかのようにご飯をだす。貰えるなら拒まないから、出たものは食べる。嫌われてるから、玉葱を混ぜられてしまうんじゃないかヒヤヒヤした時期もあったけど、わざわざ抜いてくれているみたいだった。死ぬ心配もないし、何よりおいしいご飯が食べられる。雨風の当たらない、あったかい屋根の下でねられる。こんなに過ごしやすいなら嫌われていたって出ていく気にはならなかった。

今日も家で一番大きくて日当たりの良い窓の下にねっころがっていると、珍しいことに客が来た。僕がこの家に来てからはじめてのお客さんだった。きっと邪魔だと首ねっこをつかまれて窓から放り投げられるんだろう、それはさすがに勘弁してほしい。今日は打たれる前に温かな窓辺からそろりそろりと離れてやった。ずっと日に当たっていたおかげで体がぽかぽか暖かい。あったまった体に日陰はちょっと寒すぎて、僕はひとつくしゃみをした。すると客はふっとこちらを振り返った。打たれるのかと身構えると、客の肩の向こうに家の人の苦虫をかみつぶしたような顔が見えた。早く居なくなれば良いのにと目が雄弁に語っていて、そんな露骨に感情をあらわされるのは初めてだったものだから、本当に嫌われているのだと泣きたくなった。

じいと家の人を見つめたあとのことはあまり覚えていない。客に抱き抱えられて、家の人が笑顔で手を振って、景色が流れて…。気がつくと自分が立っているのは知らない家の前だった。どこだろう、初めて見るものがぽつりぽつりとある。今まで居たところより、木が多くて緑に囲まれている。不意に背後から足音がして、跳びはねて後ろを向く。申し訳なさそうな顔をした客が居た。

「わりい、驚かせたな」
くしゃっと僕の頭を撫でると、客は目の前の家の玄関を開けてお前も入れと手招きした。そろりと中に入ってみると、じわりと自分はもらわれたのだという感覚が沸いてきて眉をしかめた。この客は何を思って僕なんかを引き取ったのだろうか。客は僕を嫌っては居ないのだろうか。おいしいご飯と暖かい寝床にありつけるだろうか…。

「!?」
「お前飯食ってんのか?歳の割に軽すぎるだろ」

ひょいと抱かれて地面が遠ざかる。脇にある手の温もりだとか抱き抱えられる感覚だとか、宙に浮く自分の体だとか、とにかく初めての感覚が一気に襲ってきて体を強張らせた。直後に眉をハの字に寄せて焦ったような顔をした客の顔が近づいてきて目をつぶる。わけのわからない感覚が怖かった。ぎゅうと目をつぶって次にやってきたのは、自分を包み込む暖かい何かの感覚だった。
「本当に痩せてんなあ。…お前もしかして抱っこ苦手…いや、されたこと無いのか?」
「…?」
おそるおそる目をあけて客を見つめる。客はあーとかうーとか唸ったあと、乱暴に僕の頭を撫でた。その手つきが思ったより心地好いもので目を細めると、客は再びぐしゃぐしゃと撫でて笑った。
「俺がこれからお前と一緒に暮らす染岡だ」
今までよりうんと触る回数増えんぞ、その言葉にちょっと反応したのは癪だから内緒である。僕は単純なんだろうか。これからというものに期待が膨らむのがわかった。















人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -